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北海道 吉崎元章
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exhibition北海道立体表現展

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北海道立体表現展

 北海道在住の28人の作家が、北海道立近代美術館で立体作品による展覧会を開催した。北海道において北海道立近代美術館の特別展示室は、作家達にとって一番の晴れ舞台であろう。そこを借りて、これだけの人数の作家主導で開催されるのは、僕の記憶によると10年ぶりである。80年代には、この会場で「北海道現代作家展」や「TODAY」など現代美術を指向するグループ展が盛んに開催されていたが、1989年に開かれた20代の若い芸術家を中心とした「リニュアル展」を最後にぱたりと途絶えていた。その間にも、少人数のものやデザイン関係の展覧会、近年には、市内ギャラリーで開催していたグループ展の周年記念拡大版なども目立ってきてはいたが、日頃の所属団体を離れ、世代を越えて集まる、80年代のグループ展を彷彿とさせるものは本当に久しぶりである。
 
展示風景
展示風景

 この展覧会、北海道内からさまざまな作家が自主的に集まっているため、確かに北海道の立体造形の現状の一端を見ることができるのは確かであるが、一方で同じ会場で12月に開催する「HIGH TIDE展」と作家を取り合うような形となったため、幾人かのおもしろい活動をしている作家の作品が見られないのは残念である。
 仕切り壁をまったく用いず、広々としたスペースは気持ちよく、それぞれ力作で、持ち味を十二分に発揮し見応えがある。しかし、この空間に28点の作品はやはり多すぎる。学芸員が企画した展覧会を見慣れた空間であるせいもあろうが、北海道で立体作品を制作しているという共通項のみでは、全体を通してのコンセプトや展示構成が希薄で、公募展的な羅列は否めない。
 しかし、こうした作家の共同の活動がまた活発になり、さまざまな方面に刺激を与えていくことは大いに歓迎したい。北海道の美術を振り返った場合、北海道の美術を形づくってきた公募展やグループ展、その他もろもろの動きは、行政サイドではなく、常に自らのニーズによる作家達であった。かつて活発であった現代美術の集団的活動は、それぞれの進むべき道の共通性を見失ったところから一時鳴りをひそめていたが、それぞれの違いを自覚したうえで再び集結し始めている昨今の動向。これからどのような展開がはじまるか楽しみである。
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会期:2001年9月1日(土)〜9月9日(日)
会場:北海道立近代美術館 北海道札幌市中央区北1条西17丁目
アーティスト:阿部典英、荒井善則、板津邦夫、泉修次、伊藤隆弘、大滝賢二、岡沼淳一、柿崎煕、川上りえ、小石巧、佐々木けいし、鈴木武子、中江紀洋、高橋昭五郎、楢原武正、仲嶋貴将、韮沢淳一、野又圭司、野村裕之、平田まどか、藤井忠行、藤本和彦、堀木淳平、松井茂樹、山田吉泰、吉田茂、渡辺潤、渡辺行夫
問い合わせ:Tel. 011-644-6881

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exhibition第一回北方圏音楽祭 Iwamizawa Art & Music Festival 2001

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第一回北方圏音楽祭

 札幌在住の現代美術家・端聡(はた・さとし)が舞台の芸術監督をするというので岩見沢まで観に行った。森に囲まれた20000人収容のオープンしたての野外音楽堂。端は、家族の絆、戦争、環境破壊など社会的なテーマを、写真、鉄板、ミルク、スピーカー、ビデオプロジェクターなどを駆使し音と映像を織り交ぜながら重厚な造形のなかに表現していく、北海道では稀な存在である。昨年芸術の森美術館で開催した「北の創造者たち2001」展にも出品してもらっている。彼が音楽祭の芸術監督? どのようなものか期待半分、不安半分で出かけたが、その完成度に圧倒され、心揺さぶられた。確かに、昨年の芸術の森美術館での展覧会の関連事業として映像とパフォーマンスによるファッションショーを行ったが、今回のは、ハンブルクバレエ団、パーカッションカルテットのES(エルベトナーレ・シラクワーク)など世界の一流の出演者をそろえての公演である。第二幕からしか観られなかったが、ボーカル、モダンダンス、パーカッション演奏とプログラムどおりにシンプルな演出が続き、そしていよいよ最後に、それまでの出演者が総出演し、映像とファッション、ダンス、演奏が融合した端ワールドがはじけるのである。現代風にアレンジされたボレロにのって、舞台背景の巨大スクリーンに文字をもとにしたCG映像が映され、その前で白い衣装を効果的に取り入れたダンスが展開される。クライマックスでは、パーカッショングループがかたわらで激しくスティックを振るう。ボーカルが旋律を刻み、会場全体が大きく脈動するような異様な一体感を生み出す。ボレロのダンスといえば、イコール、ジョルジュ・ドンという印象を多くの人が持っているだろうが、端はあえてそれに挑戦し、社会不安、人間性不在を訴えかけるまったく新しい現代のボレロを誕生させた。端のキーワードである「かっこよさ」が炸裂したステージであったと、同じ公演を観た学芸員と話したが、彼の立体造形では静かに心の奥に染み入るように訴えかけてくるメッセージが、舞台では、まさしく心の中ではじける感じがした。ぜひまた彼が監督をした舞台を観てみたいものである。
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日時:2001年9月1日(日) 17:30〜20:30
会場:いわみざわ公園野外音楽堂キタオン 北海道岩見沢市

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report学芸員レポート [札幌芸術の森美術館]

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 美術館の学芸員をしていると、いろいろなところから講師を頼まれる。4月からは、芸術の森美術館のすぐ隣にある札幌市立高等専門学校(インダストリアル・デザイン学科)で近代・現代美術史を教えている。毎週毎週一時間半、約80人の学生を前に話すのだが、美術史はある程度知っているつもりでいたけれども、間違ったことを教えるわけにいかず、勉強のしなおしである。また教材のスライドをつくるなどかなりの時間がかかってしまう。通常の学芸員としての仕事以外にやらなければならないので、思った以上にたいへんであった。学生は5年生(中学を卒業して入学するので通常では大学2年にあたる)。最初にアンケートで美術史や作家の名前をどれぐらい知っているか調査してみると、予想をはるかに下回った。現代の教育カリキュラムでは、美術を鑑賞する楽しさの一助となる美術の教養もないがしろにされているということだろうか。美術館に展覧会に来る人もそうなのかもしれない。先日、美術館教育で知られているニューヨーク在住の福のり子さんに話をうかがったが、ニューヨーク近代美術館の調査によると、鑑賞者には5段階あり、最も多いのは、アートに興味を持っているが美術史などの知識はあまり持っておらず、アートを自分なりのせまい基準からしか見ずに、自己の定義に当てはまらない作品に出会うと困惑する人なのだという。美術館の解説がいままでどおりでいいのか、いろいろと考えさせられる今日このごろである。
 なお、10月からは、北海道大学で「学芸員から見た美術の世界」という講義を半年間もつことになっている。
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