「おしっこ」
とつぜん、みきがいいだしました。深刻そうな顔で、まきとゆきを見ています。
「また?」
「さっきしたじゃない」
まきとゆきは、自分たちがおしっこをしたくないからでしょう、面倒臭そうに、みきを見下ろしていました。
「もれちゃう」
お便所へ行くには、駅まで戻らねばなりません。もちろん、そのへんで見つからないようにしたって、ほんとはかまわないのですけれど、四人姉妹は育ちがよかったので、そんなこと、思いつきさえ、しないのでした。
「ここで待ってるから」
「いってらっしゃい」
「おひ嬢さん。迷子になって困っているの。お父さんを探しているんだろう。いっしょに探してやろう」
ふんすいの水がみえたときは、もう、ほとんど、限界でした。高く吹き上げるその水を見たみきは、ひとつ大きくうなずきました。そして、駅のある方向ではなく、より近い、ふんすいに向かって走りだしたのでした。