地味な展覧会なのに、この手の展覧会としては驚くほど入場者が多かった。それも、皆一様にお勉強モードで、メモをとったりしている。あんなに近くに寄って何を確認しているのだろうか、と思うほど、ほとんどの人が作品を舐めるように近づいて見ている。作品を注意深く見ようとするあまりか、目線の位置にあるものにしか目がいかなかったのか、床のカール・アンドレの銅とマグネシウムの正方形の板を市松模様に並べた作品を、大胆にも踏んで通過した人がいた。横に居合わせた監視員さんは驚きのあまり大声をあげていたが、たまたま横を通った担当学芸員のOさんはこともなげにそのまま通り過ぎて行ってしまった。あれは上を通っても構わない作品だったのだろうか。近頃はそんな作品も多い。傍観者である私にとっては、面白い一幕だった(そういう私も実はちょっぴりお勉強モードでもありました……)。
[8月12日(日) 原久子]