Aug. 6, 1996 | Aug. 27, 1996 |
Art Watch Index - Aug. 20, 1996
【《未来都市の考古学》展】………………●塚本由晴
【はかなさとあわれさとこわれやすさと
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未来都市の考古学
ジョヴァンニ・ムーツィオ他
エティエンヌ=ルイ・ブレ
コンスタンチン ・メーリニコフ
ジョヴァンニ・バッティスタ・
アルベルト・シュペーア
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《未来都市の考古学》展 ●塚本由晴
未来の都市を考古する アルベルティ、ピラネージ、ブレ、ルドゥー、デュク、ガルニエ、サンテリア、レオニドフ、メーリニコフ、チェルニホフ、ヒルベルザイマー、ライト、シュペーア、テッラーニ、アーキグラム、スーパースタジオ、ロッシ。この展覧会では彼等によって構想されたが実現されなかった建築や都市のプロジェクトを、版画や模型、CGアニメーションなどによって見ることができる。しかし展覧会のタイトルは「実現されなかった建築、都市」や「理想都市の歴史」ではない。「未来都市の考古学」である。この未来の都市を考古するという、ちょっと不思議で気の効いたタイトルは、展覧会の意図を強烈にアピールしている。 モデルが描かれた未来都市
未来都市というと、21世紀とか100年ぐらい先のこととか、具体的な時間を考えてしまいがちだが、この展覧会ではそのプロジェクトが何年先を睨んだものかは重要ではない。例えば展示の重要な一角を占めるシュペーアの大ベルリン計画は、未来というよりはナチス・ドイツという政治体制による都市空間を定義しようとするものであったし、ピラネージは古代ローマという十数世紀前を純粋に睨んでいた。また未来都市というと、都市全体を計画したものやSF映画を考えがちだが、この展覧会ではロシア構成主義者やテッラーニによる建築単体のプロジェクトも模型やCG アニメーションによって展示されている。さらにボザールのローマ大賞受賞者による古代ローマ遺跡やアクロポリスの復元図も展示されている。 圧巻はCGアニメーション
展示の内容は、時代が今日に近づくほどに力強さを失っていくようにも見え、未来都市を描くことを諦めてしまいがちな現代のクリエーター達への苛立ちさえも感じさせる。その中で、展覧会の見せ場でもあるこれらのプロジェクトのCGアニメーションの制作は、断片的な情報の比較検討から全体を描き出していくという意味で一種の考古学であり、考古学的な想像力が未来都市の創造につながるということの現代的な実践のといえる。 [つかもと よしはる/建築家]
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《倉俣史郎》展
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はかなさとあわれさとこわれやすさと ●椹木野衣
ジャンルや趣向の差異を無化する倉俣の魅力
倉俣の作品についてあらためて考えさせられる、貴重な展覧会である。 荒木−倉俣の見事なコンビネーション
そのことを考える上でもっとも大きいのは、会場の構成の随所に、すでに記した荒木経惟の作品が使われているということだろう。会場構成をエットーレ・ソットサスが手がけたということなので、荒木の写真を使うという案も、ソットサスによるものなのかもしれないが、いずれにせよ、倉又と荒木という、一聴しては意外と思われても不思議のない組み合わせが、展示空間の中で、これ以上ないほど見事なコンビネーションを見せているのである。 [さわらぎ のい/美術批評]
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