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ArtDiary ||| 村田 真のアート日記
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12月15日(月)

新宿の三越美術館で「平山郁夫が描く未来への文化遺産」展を見る。例のシルクロードを中心としたアジアの風物が、絵葉書よろしく描かれている。しかし、ナショナリスティックな日本画という手法でアジアを描き尽くそうという欲望は、はたしてどこから来ているのだろうか。それを「アジアの懸け橋」と呼ぶのは、どういう神経なのか。その前に、金や青といった高価な画材をふんだんに使うより、デッサンの勉強をやり直したほうがええんとちゃうか。
 続いて伊勢丹美術館の「ノーマン・ロックウェル展」へ。こちらも国粋主義の画題がいささか鼻につくが、その見事な描写力には舌を巻く。このノーマン・ロックウェルやアンドリュー・ワイエスみたいな緻密な具象画が国民に親しまれる一方で、同時期に抽象表現主義やポップアートを世界に打ち出すというのもアメリカらしい。日本じゃ“国民的画家”(“国家的画家”か?)といえば平山郁夫しかいないもんね。でも、職人技に徹したデッサン力で、ノーマン・ロックウェルの勝ち。

12月23日(火)

愛する妻とともに「もののけ姫」を見に行く。けっこう楽しめた。要は神話的世界と産業社会の対立の話なのだが、ノーテンキに野蛮を征伐するわけでも、また自然保護を叫ぶわけでもなく、主人公もどっちつかずのまま物語は重層化される。「猪突猛進」「犬猿の仲」といったことわざが視覚化されているのもおもしろい。ただ、色が汚いですねー。実写でなくアニメなんだから、もうちょっと色彩センスを磨いたらどう? ともあれ、天皇誕生日にふさわしい一作でありました。

12月28日(日)

電車とバスを乗り継いで、伊豆高原の池田20世紀美術館へ「美術と舞踏の土方巽展」を見に行く。かつて「土方巽」を「つちかたつばさ」と読んで大恥かいたという愛する妻と一緒の旅。妻には内緒だが、ぼくもこの名前を初めて目にした時、密かに「どかたせん」と読んでいたので笑えない。展覧会は、横尾忠則のポスターや中西夏之の舞台美術、三島由紀夫の書、細江英公の写真などから構成され、当時の表現者たちのジャンルを超えたコラボレーションの熱気が伝わってくる。
 ただ、今回に限ったことではないけど、ここは展示が雑然として作品が見にくい。それは階下の常設展示室にもいえることで、ピカソ、ミロ、ベーコン、デ・クーニングなどが上野の団体展のごとく雑多に並べられているのだ。絵本だの人形だのカシニョールだの、子供だましの美術館が林立する伊豆高原では、ほとんど唯一本格的なコレクションを持っているのだから、もう少し展示にも気を配ってほしいところ。

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