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展覧会の楽しみ方

「芸術の秋」の先頭を切って、韓国の光州でのビエンナーレがオープンした。オープニングに会わせて出かけた知り合い諸氏から感想を聞く。作品の印象の他に、まだ暑かったことに加え、どこで何をやっているのか情報の入手が難しかったそうだ。巨大国際展の開催・運営の難しさとして聞く言葉だ。しかし、このような情報の希薄さによる混乱は、今回で2回目の光州ビエンナーレに限ったことではない。これまでnmp-jで紹介してきた欧州を開催地とする3大国際展でも同様の問題は存在する。

主催者側のサービス体勢の問題もある一方で、巨大国際展をムリなくムダなく鑑賞するためのちょっとしたテクニックを知っているだけでずいぶんと助かるものだ。プレス関係者が集うオープニング時には、さまざま情報が会場で飛び交うが、その時期をはずすと、ゆっくりと落ちついて鑑賞できる反面、情報は不足しがちで、作品のそばまで立ち寄っていながら見落として帰る不幸なケースも少なくもない。
 そこで今回のエディターズ・コラムでは、ちょっとした展覧会の楽しみ方のヒントを綴ってみたい。ハイシーズンを避けて、これから3大国際展を初めて訪れようと考えている方々にはぜひ参考にしていただきたいと思う。

今回の3大国際展のインフォメーション・サービスはかなり充実していると思う。土地に不案内の鑑賞者にとって、インフォメーション・サービスはなにも展覧会情報に限ったものではなく、利用する交通機関等のインフォメーションも重要なことは言うまでもない。が、ここでは、会場にたどり着いてから会場を歩き始めるちょっとした間の作戦に限定したいと思う。

限られた時間内であまねく鑑賞しようとしたら、情報収集をし作戦を立てる必要がある。つまり、予習をして会場に臨むわけだが、このプロセスの導入には、次のような利点がある。

予習による効果

1)出品作家数や展示作品数が把握できる(展覧会の傾向を把握することで大きなイメージを持つことができる)。

2)そのものズバリの作品が展示してなくても、それらしきものが作品である判断や予測が可能となる(掲載写真の作品に遭遇するとは限らず、作家の作品の傾向を知り、当たりを付けることができる。例えば、平面なのか、立体なのか、ビデオなのか、塊か広がりのあるものなのか等)。

3)しばらく時が経過した後でも記憶に残っている率が高い(矢継ぎ早に、作品を見て廻ると、どこで何をみたのか判然としなくなる事が多い)。そんなことは、どうでもいい。足で稼げばよいと思われるかも知れないが、広い会場では、それこそどちらに向いて歩いていき、何を見ればよいのか分からなくことはままある。

予習のしかた

1)インフォメーションに立ち寄って、〈ガイド〉を必ず購入する。できれば〈カタログ〉を手にして見る(重いけれど、部屋に戻ってからゆっくり楽しむことができるので購入するのも手です)。

2)すぐ入場しないで、はやる気持をおさえてカフェに入ってお茶にする。飲み物は、ビールでもワインでも可。ここで先ほど購入した参考書をひもとき目を通す。速読、パラパラめくり何でもあり。どんなささいなことでも情報やヒントになる。できれば、プログラムやコンセプトのテキスト部分の拾い読みまで行えばいうことなし(この作業こそ、ホテルのベットの上でのんびりとしたいものです)。

3)どこから攻略するか持ち時間と相談し作戦を練る。

以上の準備をしても無数の落とし穴が用意されている。ビデオやフィルムの作品では、所要時間の見当がまったくつかないことがあるのをはじめ、参加型・体験型の作品でも条件は変わる。しかし、盲目的に「木を見て森を見ず」(それはそれで楽しいものですが)にならずに、大きなルート取りの俯瞰イメージをもって会場に向かうと、結構、余裕をもって見ることができる。
 最後に一つ。次から次へと作品を見続けるのは、結構疲れる。そこで、適宜休憩を取りながら、廻った箇所のおさらいをしつつ、次の策を練るのをお進めしたい。周囲の人と情報交換しながらそんな見方をするようになったとき、ちょっと前よりも上手い鑑賞者に変身している自分に気付くことでしょう。
森 司(nmp監修者)

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