日本は世界に冠たるマンガ大国になっている。その様子はテレビや新聞を通じて世界に報道され、また人気作品は合法的にまた海賊版として外国に紹介されている。しかし、それらは断片的なものであり、日本マンガを全体として理解することは外国人には難しい。これから毎月、日本マンガをテーマに沿って紹介していきたいが、その前に概観的なまた基礎的なことを語っておこう。
まず、産業としての日本マンガである。これは、世界の三大マンガ先進国である日米仏の中でも他を圧する大規模なものとなっている。
日本にはマンガの専門誌が多数あるが、その数がどれだけあるか正確にはわからない。小さな出版社が誌名を変えては次々に出すマンガ誌も珍しくないからである。大出版社の出している週刊誌だけで13誌、隔週誌が10誌、有力月刊誌が約20誌あり、これらが中心になっている。また発行部数が百万部を超えているものがだいたいいつも10誌はある。マンガ以外の雑誌で100万部を超えるものは多くても一誌しかない。
マンガの一年間の売上げは、1990年代を通じておおむね6000億円であり、その内訳は、マンガ雑誌3500億円、単行本2500億円である。一般の雑誌や新聞にもマンガは掲載されているが、この数字にそれは含まない。全出版物(新聞を除く雑誌・書籍)の年間総売上げが2兆5000億円だから、その四分の一をマンガが占めていることになる。日本の総人口が1億2000万人であり、日本人は一人あたりマンガに1年間2000円費やしているわけである。
マンガを出している出版社のうち大きなものは、講談社、小学館、集英社、この3社である。これに次ぐものとして秋田書店、双葉社、少年画報社、白泉社、日本文芸社、光文社など約10社がある。さらに小さな出版社は無数にある。以上のうち大手出版社、準大手出版社はマンガ以外の雑誌や書籍も出している。
日本のマンガ家の数は3000人ほどいると推定できる。彼らは出版社から1冊は単行本を出している人である。しかし、その大多数は大作家のアシスタントをしたり、副業を持ったりしている。マンガの収入だけで平均的市民以上の生活ができる人は総数の1割である300人ほどである。この他にアマチュア作家がいて彼らは同人誌を出している。
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