欧米のマンガに較べて日本マンガは次のような特質を持っている。
雑誌連載中心であること
日本マンガは、単行本用に描き下ろされることはきわめてまれで、1回20〜30枚ずつ雑誌に連載され、それが後に単行本化される。そのため、大多数はモノクロである。人気作は何年にも亙って長期連載され、単行本は何十巻にも及ぶ。
想定読者の年齢や性別によって区分されること
マンガはその掲載紙が想定する読者の年齢によって、おおまかに次のように区分できる。幼年誌、少年誌、ヤング誌(青年誌とも言う。十代後半から二十代後半を中核読者とする)。成年誌(大人誌とも言う。特に上限を想定しない)。また、女性向けのマンガ誌もあり、これは年齢的には少女誌とレディス誌(Ladiesの日本風読み方による)の二区分ほどである。女性向けのマンガは特有の人物描写、また特有の文法(コマの統辞法)を持っている。
ストーリーマンガがよく発達していること
日本では一コマや四コママンガよりストーリーマンガが大いに発達し、まるで映画のようだと言われる。映画はカットが構成単位(分節=articulation)になるがマンガではコマが構成単位となる。このコマの統辞法がきわめてよく発達し、物語をなめらかに視覚化することができるようになった。
欧米のストーリーマンガとの大きなちがいは、欧米がテーマ中心主義であるのに対し、日本がキャラクター中心主義であることである。日本マンガでは、テーマはキャラクターの言動を通して明らかになってゆく。読者はキャラクターへの感情移入によってテーマを体験するわけである。この方式は多数の読者をひきつけることを可能にしている。
名称
日本ではマンガを「マンガ」と呼んでいる。出版社では欧米への劣等感から「コミック」という英語を使いたがっているが、読者の間には必ずしも広がらず、「マンガ」と呼ぶのが多数派である。「マンガ」は本来表意文字である漢字で「漫画」とかく。これは「冗談の絵」という意味で、諷刺絵や軽妙な線画のことであった。しかし、1960年代後半、現代マンガが大きく発達するにつれ、諷刺や笑い以外のことも多く描かれるようになり、表意文字の束縛を離れるために表音文字のかたかなで「マンガ」と書くようになった。欧米でも日本のマンガの特異な隆盛に注目し、Mangaと書くことが多い。 |