reviews & critiques ||| レヴュー&批評 |
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「脱世界史性」もまた一つの歴史? ─バットシェバ・ダンスカンパニーの公演を観て思ったこと |
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熊倉敬聡 | |||
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闇と光:人類史への瞑想
イスラエルのコンテンポラリー・ダンスの代表的カンパニーであるバットシェバ舞踊団が初来日した。東京でも三つのプログラムを行い、私はそのうち「ジーナ」と「アナフェイズ(細胞分身)」を観た。 |
ジーナより |
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「歴史」の不在の肯定を越えて
この独特のステージの歴史性は、おそらくイスラエルが現在おかれている世界史的な状況、そしてそれを引き起こした過去の歴史が強いる特異な緊張によるものであろう。その緊張が半ば無意識的に闇と光のパフォーマンスとして現れているにちがいない。 |
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確かにそうなのかもしれない。大塚も言うように、この「サブカルチャー」「人工性」「歴史の空白」を肯定することに堪えられず、新たな「歴史」、「正史」への焦燥にさいなまれる者たちが、あるいは「オウム」に、あるいは「新しい歴史教科書を作る会」に走ったりするのであろう。しかし、そのようにして、歴史、リアリティの「不在」が唯一の歴史、唯一の現実だとしても、私はその肯定だけに安住する気もまたないのである。なぜなら、世界全体がそのような記号論的ないしメディア論的タナトスに自らを昇華していこうと言うのなら、ある意味で仕方がないが、どうも世界史はそうは進まないように思えるからである。イスラエルのバットシェバ舞踊団の闇と光が描く「リアルなもの」への瞑想こそ、今「脱世界史」的環境に生きる者に一番必要なのかもしれない。 |
バットシェバ舞踊団 《ジーナ》 |
会場:彩の国さいたま芸術劇場大ホール 会期:1997年9月4日(木)〜9月7日(日) 《アナフェイズ(細胞分身)》 |
会場:東京国際フォーラムホールC 会期:1997年9月9日(火)〜9月12日(金) 問い合わせ: Tel.03-3580-0031 財団法人 日本文化財団 |
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