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マンガの国 日本−4
時代劇マンガと代表的作家1
MANGA
go tchiei
呉 智英
この原稿は、マンガをめぐる日本の状況を海外に紹介する目的でnmp internationalのために書きおろされたものである。

戦前戦後の時代劇

欧米で人気のある日本マンガの一つに時代劇がある。サムライもののことだ。剣戟の響きの擬声語からチャンバラ劇とも呼ばれる。日本の中世末期の16世紀から、近世である江戸時代(1603〜1868)の終わりまでを舞台にしたもので、史実に近いものもあれば、創作性の強いものもある。そもそも時代劇は、第二次大戦前から映画や大衆小説として愛好され、戦後はTVドラマとして年配者を中心に愛好されてきた。しかし、マンガの時代劇は少し事情が異なっている。
現代マンガの前史である戦前のマンガには、これといった時代劇は見当らない。今世紀初めの大正時代(1912〜1926)、宮尾しげをが描いた『団子串助漫遊記(団子串助の愉快な旅行記)』は、その主人公の名前が串に刺した丸い餅という意味であることからもわかるように、子供向けのユーモアマンガである。昭和戦前期(1926〜1945)に大変人気のあった田河水泡『のらくろ二等兵(のら犬の“くろ”二等兵)』と島田啓三『冒険ダン吉(ダン吉の冒険物語)』は、ともに軍国主義の影は見られるものの、サムライの時代を舞台にはしていない。
第二次大戦敗北後7年間ほどの間も、時代劇は見当らない。戦前にあった戦争劇も見当らない。日本を占領していた連合軍(実質的には米軍)が言論規制をし、サムライや柔剣道や日本軍を扱った小説・演劇・映画・マンガなどの製作や上演ができなかったからである。日本の軍国主義復活を防ぐためというのがその理由であった。1952年、サンフランシスコ講話条約発効とともに言論規制は解除され、日本人は時代劇も戦争劇も楽しめるようになった。
ちょうどその時期は、現代マンガの第一次ブームの頃で、1952年の『イガグリくん(いがぐり頭の柔道少年)』と54年の『赤胴鈴之助(赤色の胴を着用した少年剣士)』は子供たちに圧倒的に支持された。両作品とも福井英一の手になるものだったが、後者を連載開始直後福井が急逝し、これは武内つなよしが引き継いだ。この二作の亜流や追随作も雑誌に溢れた。
これらの作品は、物語も描写も子供向きで、どこか教訓臭やユーモアも感じられた。1960年代後半のマンガの変革期を経る前の作品だったからである。
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