2022年10月01日号
次回10月17日更新予定

キュレーターズノート

2009年1月の福岡/21世紀の作家──福岡 bis 2009

山口洋三(福岡市美術館)

2009年02月15日号

御笹朋子(Le coin de Realite、1/10~1/18)

 1977年生まれ。陶器のオブジェによるインスタレーション。関西で活動していたが近年福岡に戻った。陶によるオブジェの質感はみごとで、触覚を刺激される。つるっとした表面の、柔らかそうな質感の物体は見た目にも心地いいのはなぜだろうか? ギャラリーの入居する「冷泉荘」の屋上に、小さな陶製キューブによるインスタレーション(しかし当日大雨であまりいい状態では見られず)。彼女もまた小さな静謐世界を探求しているようだ。気持ちはわかるが本当はもっといろんな事ができる作家であるように見受けられた。

日野陽太朗「森を見て木を見ない2」(アートスペース・テトラ、1/20~2/1)

 1976年生まれ。個展題名は「森を見て木を見ない2」。一昔前のRPGの1シーンのような情景を絵画化していたが、少しずつ変化を見せている。淡い色彩をベースに細筆による線描を行ない、色面に変化をつけている。本人の内面に関するなにかがそこで語られているように思えたり、具体的なイメージソースがあるようにも見えるが、もやもやとした期待感をこちらに持たせたまま結局作品に深入りできない。これは作者の意図なのかどうか。画布の縫い目に沿って無数に描き込まれた線でできあがっている地形のようなイメージは、一種の自動筆記とでもいえるか。でもそれが(やはり少し昔の)CGのように見えるところは興味深い。

瀬戸口朗子「光のつぶ 水の環」(M.C.APERTO、1/23~2/1)

 1980年生まれ。「光のつぶ 水の環」という個展題名。最近精力的に制作・発表を行なっているが、発表ごとの作品のレベルの高低差が激しい。昨年末のアートスペース・テトラでの個展の出品作品のほうがよかった。今回の作品は、仕上げで一手間よけいな事をしているのではないか。「光」とか「水」というわりには色が濁ってしまい、画面に透明感がなくなってしまっている。表面にも工夫がなくて鑑賞者を作品中に引き込まない。色の使い方とか、描法とかいった、絵画制作のベーシックな部分に不安を感じるので、少し発表を控えてもいいからそうした部分を自分の作品世界に対して見合うかたちで研究したらどうだろうか。

田代国浩(ギャラリーとくなが、1/17~1/25)

 1960年生まれ。上記作家たちに比して年齢は離れるが、最近この画家の作品に触れる機会が多かったので記すこととした。人物や風景イメージをベースとした抽象的な作風は一貫している。上記の若い作家たちに比べて作品にスタイリッシュさとか今風の洗練からは距離があるのだが、この作家の作品にはごく単純にいって「絵を描く悦び」のようなものを感じる。会場の傍らに積み上げたヌードデッサンやポストカードの存在が、なおその思いを強くさせる。のたうつ白や黒の線とぶつかり合う色彩、とは常套句にすぎるけれど、「一本の線」が画面に置かれるときに生まれる空間と、この背後にある作家の痕跡が、感覚的な部分を凄く刺激するのである。展示された作品は新作であろうが、準備された作品はこれだけではなく、もっとたくさんあるのではないだろうか。量があればいいというものではないが、しかしその量が裏打ちするなにかが、この作家のなかには確かにあると思う。ライブペインティングも行なっていたそうで、こちらは拝見できず。次回はぜひ伺いたい。

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