2022年10月01日号
次回10月17日更新予定

キュレーターズノート

2009年1月の福岡/21世紀の作家──福岡 bis 2009

山口洋三(福岡市美術館)

2009年02月15日号

学芸員レポート

 2008年5月1日号で「和田千秋展」をご紹介したが、これは「21世紀の作家──福岡」というシリーズ企画展の一環で、1979年(福岡市美術館開館の年)以降の福岡アートシーンにて活躍してきた作家を個展形式で取り上げる趣旨であり、現在まで合計8人の作家の個展を開催してきた。「過去の実績が確かな作家による新作個展」はどれも充実したものだったし、各作家の方々も全力で取り組んでくれた。しかし、シリーズ開始から8年が過ぎると、福岡の状況にも世代交代が起こる。先述した若い作家たちの熱意に応えつつ、状況に対して批評となるような展覧会をできないものかとはなんとなく考えてはいたのだが、今回「21世紀の作家──福岡 bis 2009」(以下、bis展)というかたちで実現した。この展覧会では対象作家の年齢をおおよそ30歳前後に限定し、個展ではなくグループ展の形式とした。個展開催とまではいかないが現時点で将来の期待できそうな若い作家を複数取り上げ、新作制作の支援を行なうとともに、まさにいま現在の福岡のアートシーンの一面を紹介する趣旨である。

 今回の出品作家は遠山裕崇、中崎博之、平岡昌也。いずれの作家も絵画を手がけている。遠山は昨年のVOCA展に出品経験はあるが、実質的に3人とも美術館企画展は初めてである。過去の作品を振り返れば、サイズの小さなものを狭い画廊のスペースで発表しているだけなので、はたして美術館の壁面を飾るに遜色ない発表をできるかどうかは蓋を開けるまでわからない。この種の企画展は、自分の意志ではどうにもならない部分で展覧会の内容が決定される。つまり出品作家任せ。新作の出品だからそれは仕方ないのだが、自分の企画といいつつも、図録の制作以外で自分の出る幕が少ない。その一方、これまで誰も文章化したことのない作家、作品を論じることは、たとえ新人であっても難しい(各作家のことは本展図録をご参照のこと)。

 さて、展覧会だが、3人とも全力で制作に取り組んだおかげで、本稿にある写真のとおり、とてもよい展示となった。さして気負わず、淡々とベストを尽くしたと思う。
 1月31日には尾崎信一郎氏(鳥取県立博物館美術振興課長)をゲストコメンテーターに迎え、出品作家のアーティストトークを行なった。公衆の面前で語ったことのない3人に自作について話してもらったのだが、気がつくと私が彼らの作品を説明して作家が「そうですね」しかいっていなかったり(笑)。どちらかというと、私が3人にインタビューしている感じ。後半では、尾崎氏より独自の視点からの現代絵画の状況分析、そしてそれぞれの作家へのコメントをいただいた。彼がこれまで手がけてこられた企画展(「痕跡」展など)やフォーマリズム批評研究などに裏打ちされた内容で、展覧会の格調を高めていただくに十分な内容であった。

 福岡の作家について福岡在住者がなにか言ったところで、それは所詮内輪でしか通用しないジャーゴンのようなものだ。客観的な他者の眼による観察と発言が、いまの福岡のアートシーンの活性化に必要なのではないか。本展の成果に関しては、そうした他者からの発言を待ち望むことにしたいが誰かやってくれるかな?


bis展での遠山作品


同展、中崎作品


同展、平岡作品

21世紀の作家-福岡 bis 200

会場:福岡市美術館
福岡市中央区大濠公園1-6/Tel.092-714-6051
会期:2009年1月6日(火)〜3月29日(日)

キュレーターズノート /relation/e_00000715.json l 1198878

文字の大きさ