キュレーターズノート
泉太郎「山ができずに穴できた」/池田亮司 + / - [ the infinite between 0 and 1]
住友文彦(ヨコハマ国際映像祭2009ディレクター)
2009年04月01日号
学芸員レポート
東京都現代美術館で、準備に関わっていた池田亮司展がオープンする。
この原稿を書いている時点では、まだ完成状態を見ていないのだが、展示途中の様子を見たときすでに、音響を使って知覚の臨界点に挑み続けてきた彼が、その試みを継続させるようにして映像を使っていると考えていたのが、じつはそれらは、例えば人間の身体を通過する空気の震えであったり、光であったり、そうした私たちを包み込む空間をつくりあげていく仕事だったのだという強烈な印象を持った。作品を見に行くというよりも、知覚可能な領域を支える不可知な領域に触れる体験をするような展示にぜひ足を運んでいただきたい。
それから、1月からは横浜に事務所を構えて、この11月に開催されるヨコハマ国際映像祭の準備をすすめている。会場は横浜トリエンナーレで使われた場所だが、これは横浜市単独開催なのでアドミニストレーションの体制づくりからはじめなければならなく、これまでの時間はほとんどそれに費やされ、これからようやく中身をつくっていくことができそうだ。特定の人のみが扱うものだった「映像」という伝達ツールが、ここ数年のあいだに社会のなかでこれまでにない幅広い利用のされ方をしてきていることを考えていくと、これが彫刻や絵画に代わる新しい表現であるように特定の分野として考えていくのではいけないという気がしている。文字とは違う表現や伝達のためのツールがここまで広範に浸透していくときに、私たちの記憶や身体に与える影響とはどんなものなのだろうか。アートや映画はもとより、科学や市民運動などの活動において映像を私たちはどう使ってきているかを考えるとても重要な時期に生きているということを強く感じている。
もうじきウェブサイトが完成してメールアドレスの登録などが可能になるので、多くの人に今後の活動をお知らせするメールニュースを受け取ってもらえると思う。ぜひこちらもよろしくお願いします。
池田亮司 + / - [ the infinite between 0 and 1]
会場:東京都現代美術館
東京都江東区三好4-1-1/Tel.03-5245-4111
会期:2009年4月2日(木)〜6月21日(日)