キュレーターズノート

Nadegata Instant Party「24 OUR TELEVISION」──アーティスト、市民スタッフ、地元メディアがつくる24時間の出来事

日沼禎子(国際芸術センター青森)

2010年07月01日号

──そういう意味で、ここでのプロジェクトのテーマは、人々がよく知っている、つまりリアルと感じる「テレビ」という存在。いまもっとも制作の佳境の段階ですが、感触はどうですか?

山城──想像していたよりももっとハードルが高くなっている。僕らではなく、関わっている人たちがハードルを高くしていっている。テレビというものに対する、それぞれのイメージがあるからでしょうね。

中崎──いつも以上におもしろいものになりますよ。僕らの役割としては、山城と僕がアーティストパートを担っていますが、参加した人たちのアイデアがどんどん立ち上がっていくので、それを実現するためには、お互いこれまで持っている以上の力、違う筋肉の使い方が必要な感じです。

──これまでの作品の展開に比べて、言葉を選ばずに言うと「展示らしい展示」になりそうですね。

野田──ACACのギャラリーに展示するこということは、もちろん最初からとても意識しています。この度は24時間の生放送番組のアーカイブを、どうやって展示として定着させるかを考えています。

中崎──例えば、展示ギャラリーのなかに番組ごとのセットを何カ所か組んでいますが、テレビクルーの側からは生放送の進行上、セットを時間軸にそって順番に組んだほうが撮影の際にスムーズです。けれども、最終的にこれは展示空間として成立する必要があるので、あえて順番を関係なく設置しています。

山城──もうひとつの見方でいえば、24時間の生放送をつくるという、演劇空間のようかたちといえます。ADもスイッチャーも全員が演者。その様子が24時間のなかで中継されるという演劇を、僕らはネットを通して観るんです。

中崎──準備段階からすでにそれははじまっていて、ボランティアのための食事をつくる人や、生放送当日に備えて機材のコード巻きを練習している学生とかも、全部含めてです。そのうえで、ここで起こった出来事をどうやって定着させていくのか。24時間という時間軸がなくなったところで、どのようにつくりかえられるのか。

山城──TOTAN GALLERYでは映像とテキストという手法だったけれども、今回は違うものになると思う。これまで制作してきた作品の変遷として、TOTAN GALLERYでは出来事を記録することが目的で、次の《パラレルスクール》では、参加者と映像作品をつくりましたが、まだ距離感があった。続く《Offline Instant Dance》では、ついに参加者40名全員がダンサーとして、作品の主役として登場することになり、今回は、参加者と一緒に作り上げるだけではなく、さらにそれをライブ中継するというかたちに発展してきた。ですから、今回はライブであり、演劇であり、アーカイブでもある。


《Offline Instant Dance》(Akasaka Art Flower 08、2008、東京)

──ACACでの制作は大きな転機となりそうですか?

野田──3人でこれだけ長い時間一緒にいることがないので、とても貴重な経験。

中崎──作品をつくるたびに、ここが最高の転換期だ!と感じながらやってきているけれど、今回のことでいえば、オペレーションのスピードがさらに要求されていますね。

野田──そういう意味で、自分たちの仕事がさらに見えてきた、という感覚です。

──あとは本場を迎えるのみですが、最後にひとことお願いします。

中崎、山城、野田(3人同時に)──本当の主役はあなたです!


ACACでの活動の様子。屋外撮影ではリフトまで出動するほど、大掛かりに

 3名のフレンドリーな印象、あるいは住民参加型という親しみのあるプロジェクトの表層だけからではわからない、現代のアート状況に対する批評性をもった彼らの活動。主催する美術館、地域振興アートプロジェクト、そして観客そのものの在り方への強い問いかけ。そこに巻き込まれることの快感に浸るだけでは、なにも気付かずに終わってしまうかもしれない。とはいえ、これはパーティーなのだ。参加しなければ損をする。そう、主役はあなた自身なのだから。パーティーが終わった後にもっとなにかが見えてくる。

[インタビュー:2010年6月19日]

★1──阿佐ヶ谷住宅は1958年竣工された分譲型集合住宅。2007年4月に取り壊されることとなり、2006年から期間限定の「TOTAN GALLERY/とたんギャラリー」がオープン。築48年の歴史の「終わり」をどう迎えるかをコンセプトに、多くのアーティストが参加、活動を行なった。http://www.totan-gallery.com/

青森公立大学 国際芸術センター青森アーティスト・イン・レジデンス2010「反応連鎖Part1:24 OUR TEREVISION」

会場:国際芸術センター青森・ACAC
青森市合子沢字山崎152-6/Tel. 017-764-5200
[24時間テレビ放送]会期:6月26日(土)19:00〜6月27日(日)19:00(24時間生中継)
URL=http://24.nadegatainstantparty.org/
[展覧会]会期:7月3日(土)〜7月19日(月・祝)
企画:服部浩之