2019年07月15日号
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キュレーターズノート

Dialogue Tour 2010 第3回:MAC交流会

坂本顕子(熊本市現代美術館)

2010年10月15日号

 MAC(前島アートセンター/那覇)とMAC(前町アートセンター/山口)。世の中にMACと名のつくものは数あれど、この二つのMACはいずれも日本の地方都市で活動を続ける、オルタナティブなアートセンターである(そのほかにも各地のアートセンターが略称として“MAC”を使用しており混乱をきたすので、以下便宜的に前島と前町と呼ぶ)。Dialogue Tourの第3回目となる「MAC交流会」では、前島(沖縄)の宮城潤が前町(山口)の会田大也を訪ね、その活動についてトークをする場面にオーディエンスの一人として参加した。

 筆者の住む熊本から山口までは、在来線の特急と新幹線を乗り継いで約3時間。近隣に山口情報芸術センター(YCAM)があり、中原中也が生まれ育ち、種田山頭火が通ったことで知られる名湯、湯田温泉駅から徒歩15分程の、グーグルマップではあまり親切に表示されない住宅地の中に前町アートセンターはある。入口にぽつんと光る看板がなければ、誰もそこがアートセンターであるとは気づかないような、ごくありふれた二階建ての民家。おそるおそる自転車の並ぶ玄関から声をかけると、主宰する会田のご家族(奥様、子どもさん3人)に迎えられ、中へと招かれた。
 そこに入ると、アートセンターというよりも、朝出てきた自宅にもう一度帰ってきたような既視感と、同時になんともいえない、くつろいだ空気が広がる。それはもしかすると、家の縁側に面して、美しい澄んだ小川が流れているせいかもしれないが、きっとそれだけではないだろう。2階は会田家の居住スペースで、1階の台所につながった二間がいわゆるアートスペースとなり、プロジェクターと簡易宿泊用の折りたたみベッドなどが顔をのぞかせる。しかし、子育て世代の常、アートスペースには子どもの遊具や落書き道具が浸食する。我が家と同様、お洒落なインテリア雑誌的な生活とは程遠い「リアル」がそこにある。


MAC外観
提供=Maemachi Art Center

 そんななか、時間になるといつの間にかぽつりぽつりと地元の人々がやってきた。程良くテーブルが埋まるころ、宮城の話が始まった。前島アートセンターの設立は2001年。沖縄県立博物館・美術館準備室の開館までのモラトリアム期間と、かつて歓楽街として栄えたものの暴力団の抗争などもあり廃れていった前島という街でなにかコトを起こしたいというビルのオーナー、そして、作品を発表したり、そのコトに関わっていきたいという人々がそれぞれに誘引され、形成されていったのが前島である。はじめは、オーナー所有のビルの中に、ギャラリースペースのほか、カフェと事務所兼図書室を備えたかたちでスタートしたという。それと同時に宮城は不定期のアートプロジェクトとして、Wanakioを2002年、03年と開催(2008年までに計4回開催)。前島としては、ビルの屋上で「アサヒ・オリオン アートビアガーデン」を開き上映会やライブ、パフォーマンスを毎日実施したり、運営資金を稼ぐために毎週末バーを開く、地域の「前島3丁目祭り」の後押しをし、なんとなくその場のノリで「前島3丁目音頭」をつくる。信じられないような壮絶な密度の活動を、宮城は訥々とまるで子どもに昔話を語ってきかせるかのようなゆるやかな調子で事もなげに語っていく。その後、高砂ビルの閉館にともなう事務所の移動を経て、2007年からは、「おきなわ時間美術館」のイベントで使用した栄町市場の中に拠点を移しているが、そこで働くメンバーによる「栄町市場おばぁラッパーズ」のパフォーマンスの圧倒的なインパクトには驚嘆の声があがった。


栄町市場おばぁラッパーズ

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