2019年06月15日号
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アート・アーカイブ探求

鈴木春信《雪中相合傘》カラリストの白と紙──「田辺昌子」

影山幸一

2013年08月15日号

※《雪中相合傘》の画像は2013年8月から1年間掲載しておりましたが、掲載期間終了のため削除しました。

雲と雪

 真っ白な入道雲が高く丸く盛り上がり、モクモクしている。力強い夏の雲は、白くまぶしいが、陰影もあって雷雲でもあることに気づくのだ。高知の四万十では連日40度を超す尋常ではない猛暑の日本列島。こんな時、江戸時代の庶民だったら、どんな知恵を生み出すのか。風流なことを考えたかもしれない。自然を味方にする江戸時代のサステイナビリティーに学ぶところは多いだろう。
 新たな表現手段である時世風俗を描いた浮世絵木版画は、人々を楽しませ町に活気を生んだ。それまで画壇の主導権を握っていた狩野派が衰え、浮世絵師は庶民の多様な美意識に心意気でこたえ、浮世絵は改良されていった。活気のある熱い浮世絵は多いが、しっとりと秘めやかな“雪”に包まれた白い世界の浮世絵もある。
 鈴木春信の代表作《雪中相合傘》(大英博物館蔵)である。男女の情感を雪景色の中で描いた物語性のある作品。カラリストと呼ばれている浮世絵師春信が、白と黒を基調に描いている。微妙に変化する白の表現は、カラリスト春信の真骨頂なのだろうか。浮世絵に白を使うわけが隠されているのだろうか。
 2002年に日本では32年ぶりという春信展「青春の浮世絵師 鈴木春信─江戸のカラリスト登場」を企画した千葉市美術館の学芸課長、田辺昌子氏(以下、田辺氏)に《雪中相合傘》の見方を伺いたいと思った。田辺氏は長年浮世絵を研究し、春信展の図録では「春信版画の紙と色─雅の謎」を執筆している。JR千葉駅から徒歩で15分、中央区役所とのユニークな複合施設である千葉市美術館へ向かった。


田辺昌子氏

  • 鈴木春信《雪中相合傘》カラリストの白と紙──「田辺昌子」

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