2019年07月15日号
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アート・アーカイブ探求

池田学《再生》──ペン画が編み出す自然と文明の神話「吉川利行」

影山幸一

2009年04月15日号

池田学《再生》
池田学《再生》2001, 紙・ペン・カラーインク, 162×162cm, 浜松市美術館蔵
無許可転載・転用を禁止. Copyright Manabu IKEDA, Courtesy Mizuma Art Gallery
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インターネットで発見

 ネットサーフィンでぼんやりと絵画作品を見ていた。すると海底に眠っていたかのような、錆びて朽ちた戦艦がこちらに向かってくる画像に目が止まった。その船を拡大して見ると珊瑚や人間や魚など、さまざまな生命があふれていた。気分はすっかり絵本の「ウォーリーをさがせ!」状態だ。何も知らず絵にアクセスしてきた者にとってこの発見は楽しい。作品サイズは162×162cmと大きいが全体像もつかめる。
 絵に引き込まれるように、より細部を見ようと拡大を進めて行けるのはデジタルの真骨頂である。だがデジタル画像の限界か、画材の質感や線の細さまでは再現されず、もっと見てみたいという欲求はすぐには満たされない。ギャラリーや美術館へ行きたいと思う。原物へ誘うデジタル画像の利点であろう。
 《再生》の所蔵先を調べてみると静岡県の浜松市美術館が保管していた。さっそく美術館へ連絡し、アーティストからも許諾を得て、作品を見ることが可能となった。
 静岡県で最も古い1971年に開館した公立美術館である浜松市美術館は、徳川家康ゆかりの浜松城に隣接している。東名高速から富士山を眺めて、訪れた時はちょうど400本以上あるという桜が満開の時期で、美術館のまわりは花見の人で賑やかだった。浜松市美術館の学芸員・吉川利行氏(以下、吉川氏)に《再生》の解説をお願いした。吉川氏は静岡大学教育学部美術専攻を卒業後、県内の小学校教師(主に図工)を務め、2007年から教育普及を担う学芸員として浜松市美術館に勤務している。

第4回はままつ全国絵画公募展

 《再生》は想像していたよりも大きく、また全体の色彩は茶系だが濃い緑色が生命力を感じさせた。作品は保護するために額装されており、透明のアクリル板を通して見るため、細部までじっくり観察することはできないが、原物のオーラを十分放っていた。
 吉川氏が《再生》を前に作品がここに収蔵されている経緯を説明してくれた。それは2001年に浜松市制90周年・浜松市美術館開館30周年記念として開催された「第4回はままつ全国絵画公募展」(以下、公募展)だった。自然と人間との関わりについて自由に表現することがテーマであったこの公募展に画家・池田学(以下、池田)からの応募があり、443点のなかから池田の《再生》が大賞を受賞し、美術館が買い上げ所蔵していると言う。審査員は陰里鐡郎(女子美術大学教授,前横浜美術館館長)、下山肇(尾道大学教授,前静岡県立美術館学芸部長)、金原宏行(茨城県近代美術館企画課長)、中島千波(東京藝術大学教授)、遠藤彰子(武蔵野美術大学教授)の5名。現在この公募展は休止中だそうだ。
 浜松市美術館はガラス絵や浮世絵、民芸にちなんだ収蔵品が約6,000点あり、地元の美術団体や公民館、学校などとネットワークを構築しながら地域に貢献している。この美術館のほか浜松市には秋野不矩美術館もある。浜松といえば楽器メーカーのヤマハが思い浮かび、美術よりも音楽が盛んな印象があったが、才能を発掘する公募展の意義を改めて思った。

吉川利行氏
吉川利行氏

  • 池田学《再生》──ペン画が編み出す自然と文明の神話「吉川利行」

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