2024年02月15日号
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アートプロジェクト探訪

島が主役の「三河・佐久島アートプラン21」

白坂由里(美術ライター)2010年10月01日号

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  「祭りとアートに出会う島」をテーマに、2001年4月にスタートした愛知県一色町の離島、佐久島のアートによる地域活性化事業「三河・佐久島アートプラン21」が開始から10年が過ぎた。この3年は毎年約1万人ずつ観光客が増え、年に約6万人が訪れるようになった。急激な変革や華々しい宣伝・イベントを行なったわけではない。毎年1年に3組ほどのアーティストが滞在してじっくり作品を制作し、2010年現在では20作品を常設。それらは1日で歩いて回ることができ、また訪れたくなる魅力を持っている。地域の潜在的な魅力を掘り起こし、適正規模で1年1年を積み重ねてきた足取りを振り返ってみよう。


佐久島東港風景

「アートピクニック」と「弘法プロジェクト」で島巡り

 信号機もコンビニもない。あるのは自然とアート、人々の交流だ。名鉄名古屋駅から名鉄西尾駅まで電車で約50分、「一色さかな広場・佐久島行船のりば」行きのバスに乗り継ぎ28分、港から船で約20〜25分とアクセスはけっして楽ではない。しかし、かつては海水浴や潮干狩りシーズン以外訪れる人のまばらだった佐久島が、近年、海沿いや山の散策道、黒壁の集落に点在するアート巡りでにぎわいを見せている。
 空家を再生した平田五郎の《大葉邸》、遠く東西の対岸に位置する南川祐輝の《おひるねハウス》と《イーストハウス》など常設16作品を巡る「アートピクニック」。さらに、老朽化した小さな弘法の祠を甦らせた「佐久島弘法プロジェクト」は「みかんぐみ」の加茂紀和子、曽我部昌史、竹内昌義、マニュエル・タルディッツによる4作品。遍路ブームで90年以上前に島内八十八カ所に建てられたが、管理できなくなって寺に預けられている大師像を小さな祠を建設して戻していこうとするプロジェクトだ。東と西の渡船場どちらからでも1日あれば歩いて回れ、レンタサイクルもある。宿や食堂は10数軒、自動販売機はあるが、都会生活に慣れた者にはいささか不便さを感じる環境だ。しかし作品がほどよく散らばり、島外から訪れる若者たちはのんびりと散歩している。


南川祐輝《おひるねハウス》。佐久島の家に倣い、コールタールで塗装した黒壁


南川祐輝《イーストハウス》。2つの東屋を60メートルの長いベンチで結ぶ


曽我部昌史《青》 撮影=香村聖文

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白坂由里

『ぴあ』編集部を経て、アートライター。『美術手帖』『マリソル』『SPUR』などに執筆。共著に『別冊太陽 ディック・ブルーナ』(平凡社、201...

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