会期:2024/09/20~2024/10/25
会場:東京ミッドタウン・デザインハブ[東京都]
公式サイト:https://www.designhub.jp/exhibitions/rof2024

日本のデザイン史を多角的な視点で俯瞰するという試みは、これまであまり行なわれてきたことがないのではないか。日本デザイン団体協議会が共催する本展は、その点で大変興味深かった。同協議会に加盟する7つ(2021年までは8つ)のプロフェッショナルデザイン団体が携わっただけあり、空間、グラフィック、インテリア、インダストリアル、ジュエリー、パッケージ、サイン、クラフトと8つの領域にわたっていたのである。まず、軸となるクロニクル(年表)が圧巻だった。終戦直後からスタートし、1950年代、1960年代、1970年代……と順を追って、その時代の背景や出来事とともに、各領域で誕生した象徴的な商品を取り上げていた。領域ごとに目を追っていけば、単独の歴史を縦断的に知ることになるが、時代ごとに切り取って見ていけば、各領域を横断的に眺めることができる。特に後者の見方をすると、その時代の空気がより鮮明に浮かび上がってきて、懐かしさを覚える場面も多々あった。

展示風景 東京ミッドタウン・デザインハブ

戦後復興から高度経済成長を遂げる過程では、どの領域においても躍進的なデザインが目立つのだが、世の中が豊かになるとデザインに対する考え方が成熟し、その後は長引く不況を経て、災害や疫病に備えつつ、地球環境に対する眼差しが深まっていく。この80年近くの間、日本がたどってきた歴史を多領域のデザインの視点で捉えると、優れた社会史にもなることを実感した。

一方でクロニクルと対峙して、6つの大きなテーマに沿った展示があり、こちらは時代(縦軸)も領域(横軸)も超えた、言うなれば斜めの軸だった。その6つのテーマとは「創造的にする」「長く使える」「素材を拡げる」「障壁を下げる」「安全にする」「心を掴む」で、デザインの役割をより具体的にしたものだ。いずれも共通して目指すところは、ユーザー(人)をいかに幸せにするかという点であろう。そのためにデザインにはさまざまな工夫がなされ、同時に産業も発達してきた。今後もクロニクルは続いていく。この過去の延長線上で我々はどのような未来を歩み、歴史を刻んでいくのか。

展示風景 東京ミッドタウン・デザインハブ

展示風景 東京ミッドタウン・デザインハブ

鑑賞日:2024/09/26(木)