会期:2024/10/05〜2024/12/08
会場:印刷博物館 P&Pギャラリー[東京都]
公式サイト:https://www.printing-museum.org/collection/exhibition/g20241005.php

現代社会において、商品を流通させる上で欠かせないのがパッケージである。商品を保護するだけでなく、容器や食器となり、また消費者に名前や中身を伝え、価値を高め、購買意欲をかき立てる役割を担う。一方で流通の役目を終えたら、比較的すぐごみになる側面があり、資源の無駄使いや生産と廃棄によるCO2排出の問題がずっと取り沙汰されている。近年は過剰包装を避ける傾向にあるものの、結局、何を売買するにもパッケージは必要不可欠であることに変わりない。となると、我々はいかに地球環境に大きな負担を掛けないパッケージを生み出していくかに留意していかなければならないのだろう。そんな悩ましい局面に立っているのが、“現代日本のパッケージ”といえる。

今年で10回目の開催となる本展を観て、そんな潮流を反映してか、全体的にSDGsへの取り組みが顕著になっていることをつくづく感じた。展示作品は、日本で開催された三つのコンクール「第63回ジャパンパッケージングコンペティション」「2024日本パッケージングコンテスト(第46回)」「JPDA パッケージデザイン インデックス2024〈特集:パッケージand つながるデザイン〉」の受賞作が中心である。例えば缶材由来のリサイクルアルミのみを使用し、通常のアルミ缶と比べてCO2排出量を約60%削減したというビールの「CO2削減缶」があった。また、プラスチックの代替素材として紙単体で成立させたパッケージも目立っていた。そこで課題になるのは、中身を伝える透明の窓である。従来、プラスチックフィルムを貼り合わせていたところ、紙自体を透明加工にすることで窓を実現したり、あるいはリアルな写真印刷でグラフィック的に解消したりという工夫が見られた。

展示風景 印刷博物館 P&Pギャラリー[画像提供:TOPPANホールディングス株式会社、印刷博物館]

展示風景 印刷博物館 P&Pギャラリー[画像提供:TOPPANホールディングス株式会社、印刷博物館]

このように省資源化やCO2排出量の削減に苦慮しつつも、最終的には消費を喚起させるパッケージでなければ商品の売れ行きに関わる。その点で印象的だったのは、大手化粧品メーカーのチューブ容器としぼりツールである。U型のしぼりツールで容器を挟んで下に滑らせながら、中身を余すことなく使い切るという趣旨のようだが、容器には両目を思わせる円が二つ描かれており、またU型のしぼりツールは口のようにも眉のようにも見える。化粧品を使い続けることで、容器自体がまるで人の顔のように笑ったり、困ったり、ふてくされたりとくるくる変わり、その豊かな表情にふと気持ちが緩んでしまうパッケージなのだ。環境配慮とウェルビーイングを両立させるパッケージが、今後の大きな流れになっていくに違いない。

鑑賞日:2024/11/24(日)