会期:2025/01/11~2025/03/23
会場:パナソニック汐留美術館 [東京都]
公式サイト:https://panasonic.co.jp/ew/museum/exhibition/25/250111/
ル・コルビュジエ(1887-1965)といえば、近代合理主義の思想をモダニズム建築に結晶させたことで知られる。そのイメージがあまりにも強いからこそ、後期の代表作である《ロンシャンの礼拝堂》(フランス・ロンシャン、1950-1955)の有機的造形には多分に驚いた覚えがある。これはこれで素敵な建築ではあるのだが、いったいなぜこんな作風へと至ったのか、ずっと疑問に思っていた。ル・コルビュジエの後期の創作活動にスポットを当てた本展はその示唆に富んでおり、ようやく疑問が少しだけ解けたような気がした。
第1章「浜辺の建築家」展示風景[写真提供:パナソニック汐留美術館 撮影:Yukie Mikawa]
*本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催されています。
解説によると、1929年から1930年代まで続いた世界恐慌により、当時、パリの芸術界には機械万能主義から自然科学的関心へと価値観が転換する新潮流が現われていた。そのため創作の着想源として自然界の原理が再び注目されるようになったのだという。ル・コルビュジエもそれに影響を受け、貝や骨、流木などの有機物の形態を建築と絵画に取り入れるようになった。彼はそれらを「詩的反応を喚起するオブジェ」と命名する。さらに絵画や素描、彫刻、タペストリー、建築、都市計画すべてに対して「諸芸術の綜合」を目指す。人間の全感覚を満たす詩的環境を作り出すために、それぞれを関与させながらひとつに集結させようとしたのである。《ロンシャンの礼拝堂》は、そうした「諸芸術の綜合」を実現した建築作品というわけなのだ。それにしても、「近代建築の五原則」と謳っていた頃から大きな飛躍である。
第2章「諸芸術の綜合」展示風景[写真提供:パナソニック汐留美術館 撮影:Yukie Mikawa]
*本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催されています。
ル・コルビュジエは常に時代を先取りする人物であっただけに、その変化にも敏感だったということはいえる。社会の進化に合わせて、自分の理念も沿わせていく柔軟さをおそらく持っていたのだ。ただし、その根底にあるのは人間が幸せに暮らすことであったのは間違いない。本展では「諸芸術の綜合」の模索の跡ともいえる、絵画や彫刻、タペストリー作品がいくつも展示されていて見応えは十分だった。そして最後の章では1954年に執筆したかの論考「やがてすべては海へと至る」が展示されており、難読の文章ではあるが、晩年のル・コルビュジエに出会うことができる。
第3章「近代のミッション」展示風景[写真提供:パナソニック汐留美術館 撮影:Yukie Mikawa]
*本展は、ル・コルビュジエ財団の協力のもと開催されています。
鑑賞日:2025/01/26(日)