会期:2025/03/19~2025/06/30
会場:国立新美術館 企画展示室1E / 2E[東京都]
公式サイト:https://living-modernity.jp

ル・コルビュジエやミース・ファン・デル・ローエ、アルヴァ・アアルト、ジャン・プルーヴェら、20世紀に活躍した有名建築家のモダニズム建築や家具はよく知られているが、案外、彼らの自邸をはじめとする住宅設計についてはそこまで関心が払われてこなかったように思う。本展は、1920年代から1970年代にかけて日本を含む世界各国で建てられた革新的な住宅をテーマにしたものだ。一人の建築家に焦点を当てた企画はよくあるとしても、暮らしという視点で横断的に検証した展覧会はこれまでにあまりなく、その点で大変興味深く鑑賞した。

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」国立新美術館(2025) 展示風景[撮影:福永一夫]

会場には14邸の住宅が例示されていたのだが、写真や図面はもちろん、キーとなる家具やテキスタイル、器などの見本、また何より模型が充実しており、鑑賞者が具体的にイメージしやすい構成となっていた。例えば、ル・コルビュジエがスイスのレマン湖畔に自分の両親のために建てた小さな住宅「ヴィラ・ル・ラク」(1923)。その特徴である11メートル幅の水平連続窓だけが切り取られ、原寸大模型として展示されていたのである。この模型と写真により、必要最小限の設備が納められた細長いコンパクトな空間ながら、湖に面した長い窓から美しい景色と光を取り入れていたことが容易に想像できた。

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」国立新美術館(2025) 展示風景[撮影:福永一夫]

これら14邸を通して、本展ではさらに7つの観点──衛生、素材、窓、キッチン、調度、メディア、ランドスケープ──で、当時の住宅建築の試みを紹介している。身体を清潔に保つための衛生設備や、家事労働を軽減するキッチンなどは暮らしの質に直結する。また光や風を取り込むガラス窓や、家具や照明などの調度、周囲のランドスケープは暮らしをより豊かにする要素となる。快適性や機能性を求めつつ、いかに楽しさや喜びを取り入れたのかを知る機会となった。さらに2階の会場へ移ると、ミース・ファン・デル・ローエの未完プロジェクト「ロー・ハウス」の原寸大展示があり、その気持ちのよい空間の広がりを身体的に体験できた。

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」国立新美術館(2025) 展示風景[撮影:福永一夫]

第二次世界大戦を挟み、1920年代から1970年代は激動の半世紀であった。一方で戦争の副産物として新しい素材や技術が次々と誕生し、産業が飛躍的に発展もした。そうした時代背景のなかで都市生活者の暮らしの礎は築かれ、現代へと受け継がれていったのである。有名建築家たちが果敢に挑んだ「住まいの実験」をとくと噛み締めたい。

「リビング・モダニティ 住まいの実験 1920s-1970s」国立新美術館(2025) 展示風景[撮影:福永一夫]

鑑賞日:2025/03/22(土)