会期:2025/03/08~2025/05/18
会場:東京都庭園美術館[東京都]
公式サイト:https://www.teien-art-museum.ne.jp/exhibition/250308-0518_backtomodern/

バウハウスが世界に与えた影響は大きいが、本展は、お膝元のドイツでバウハウスがどのような痕跡を残し、いまに至ったのかに着目したものである。特に西ドイツは戦後に飛躍的な経済成長を遂げたが、その背景には工業や商業を支えた優れたグラフィックデザインの存在があったと指摘する。例えば航空会社のルフトハンザ、自動車会社のBMW、カメラメーカーのライカなどである。併せて、1972年のミュンヘンオリンピックやセーリング・フェスティバル「キールウィーク」などの国際イベントでもグラフィックデザインは大きな役割を果たした。この辺り、同じ敗戦国として日本も似たような足跡をたどったのではないかと想像する。本展では「幾何学的抽象」「イラストレーション」「写真」「タイポグラフィ」の観点から選ばれたポスターが主に展示されていたのだが、現に一部には亀倉雄策がデザインした東京オリンピックの公式ポスターを思わせる作品もあり、ただの偶然なのか、互いの影響があったのかはわからないが、同じ匂いのエネルギーを感じたのだった。


「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景 東京都庭園美術館[撮影:大倉英揮]


「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景 東京都庭園美術館[撮影:大倉英揮]


「戦後西ドイツのグラフィックデザイン モダニズム再発見」展示風景 東京都庭園美術館[撮影:大倉英揮]

本展の一連の作品群「A5コレクション デュッセルドルフ」を有する、ドイツ・デュッセルドルフ在住のグラディックデザイナー、イェンス・ミュラーとカタリーナ・ズセックへのインタビュー映像が展示会場で流れていたのだが、そのなかでもバウハウスについての質疑応答がとても興味深かった。世界中のデザイナーが影響を受けたとされるバウハウスだが、ドイツ人にとっては複雑な思いを抱えているという主旨の回答だったからだ。まるでモダンデザイン思想がバウハウスから始まったように捉えられているが、それ以前にも同様の流れは出てきていたし、バウハウスだけが偉大なわけではないといった考えを吐露していたのである。それはそれで一理あると共感できた。理想を高く掲げつつも短命に終わったバウハウスは、後世であまりに美化され過ぎたのではないかと感じる場面もあるからだ。あるいは、デザイン史におけるある種の代名詞のようになってはいまいか。むしろ、バウハウス以後の(西)ドイツの歩みにこそリアルはある。その点において、本展は堅実で見応えのある内容だった。

鑑賞日:2025/03/25(火)