会期:2025/3/22~2025/3/31
会場:https://sakimuramoto.vhx.tv/(オンライン上映)
公式サイト:https://www.sakimuramoto.com/animation/anightattherestarea

2025年3月22日から31日にかけて、村本咲の短編アニメーション『パーキングエリアの夜』(2024)がオンライン配信された。

夜行バスがパーキングエリアに駐車している15分の休憩時間を描いた作品で、乗客たちはみな動物の姿をしている。冬の深夜、コンビニエンスストアや自動販売機の灯が、並列する車の窓ガラスに映り込む。動物たちと彼らが手にするホット飲料(あるいは、うどんのつゆ)の湯気が風に吹かれる。深夜の旅路でパーキングエリアに滞在したことのある誰もが「ああ、あのときの」と思いをめぐらす時間や体験が描写されている。

村本の描く動物たちは、擬獣化された人間である。ニット帽をかぶった犬は、パーキングエリアに着いても眠ったままの乗客を起こさないように、そっと座席を通過する。長いベンチに座るカバは隣に動物がやってくると、おしりをずらして適切な距離をはかる。自動販売機の灯に集う動物たちは、なんとなくお互いの位置関係を保つ。彼らはかわいらしく、魅力的で、そして生活者であり、他者と共生している。

擬獣化は人間から生々しさを剥奪し、行為や出来事、感情を抽出して描くことができる。その内容が受容しがたいものであっても、動物だから、あるいはかわいいから許せるという、およそ近代的な人間としてあり得ない判断が促進されることがあるため、動物の姿を借りる表現には警戒してしまう。しかし本作はそうした稚拙な問答を差しはさむ隙を持たせず、夜のパーキングエリアで見られるふるまいの所作や状況を提示する。歯磨きによる振動、落ちたカメラキャップの軌道、手洗い後の水滴を振り払う手、生活における細やかな動きがアニメーションとして表現されている。そしてそのとき村本の作品には、環世界のようにして必ず他者がいる。トイレで落としたカメラキャップは隣の個室の床から差し返され、ベンチから一人が去れば残った者たちは再びおしりの位置を調整する。

私はほとんどすがるような気持ちで村本の動物たちを見ていた。いびきをかく隣人に眉をしかめないこと。せっかく運んだ暖かなうどんを差し出しても、ふいと顔を背けられもすること。他者を他者として、些細なことを些細なこととして受け入れる態度や関係性も本作に見た。

車やバスという小さな箱に閉じ込められているところから、屋外のひらけた空間に解放される。そこには風があり、距離があり、インスタントうどんの販売機から流れる電子的なメロディが響く乾いた空がある。場所から場所へと移動するときに立ち寄る、仮止めのような空間における時間と営みが描出された作品だった。

鑑賞日:2025/03/31(月)