会期:2025/11/22~2026/02/01
会場:世田谷美術館 1、2階展示室[東京都]
公式サイト:https://tsugu.exhibit.jp

ファッション・テキスタイルブランドの「ミナ ペルホネン」の25周年を記念した展覧会開催から5年。いよいよ30周年を迎えた同ブランドの展覧会が開催されている。前回のタイトルかつテーマが「つづく」だったのに対し、今回は「つぐ」である。つぐは「継ぐ」や「次ぐ」、あるいは「告ぐ」など、いろいろな意味に捉えることができる言葉だ。同ブランドも次のステージへと進んでいることを思わせる状況にあった。というのも、代表が皆川 明から田中景子に交代。創設者の皆川はデザインに一層注力する態勢になったのだという。


展示風景 世田谷美術館1、2階展示室[撮影:山本倫子]

本展はテキスタイルの生産現場をよりフィーチャーした内容になっていた。まず、デザインのモチーフになったものと完成されたテキスタイルが対比的に展示されていて、鑑賞者の目を引き付ける。それはゴムスタンプや切り紙、マスキングテープの切れ端、手描きのイラストレーションなどで、日常のほんの些細な物からアイデアが生まれていることが伝わる。さらに日本全国にあるテキスタイル工場でどのように生地が織られ、刺繍が施され、染められているのかを紹介する展示も見応えがあった。いわば、これがミナ ペルホネンの要である。リアルサイズで、立体的に投影された映像は迫力があり、それはバーチャル工場見学ともいえるインスタレーションとなっていた。


展示風景 世田谷美術館1、2階展示室[撮影:山本倫子]

「つぐ」を体現した展示としては、洋服のリメイクを紹介するコーナーが印象的だった。前回の展覧会ではユーザーからミナ ペルホネンの思い出の一着を募り、そのエピソードを交えて紹介するコーナーがあったのだが、本展では同様のスタイルを取りながら、思い出の一着を同ブランドがリメイクし、どのようにアップデートしたのかを紹介していたのである。購入した頃と今とでは、年齢を重ねて顔つきや体型が変わり、また洋服も経年変化し、似合わなくなってしまったと感じているユーザーがたくさんいる。リメイクは、一着の洋服を長く愛してほしいと願う同ブランドにとって当然ともいうべきサービスなのかもしれない。こうした点を見ても、ファンに深く愛される要素を備えたブランドであると感じるのだった。


展示風景 世田谷美術館1、2階展示室[撮影:山本倫子]

鑑賞日:2025/11/28(金)

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