
会期:2025/12/02~2026/01/18
会場:ヒカリエホール[東京都]
公式サイト:https://www.bunkamura.co.jp/museum/exhibition/25_wegner/
会場入り口前の壁面に掲げられた写真、元・米国大統領ジョン・F・ケネディとバラク・オバマの堂々たる姿に思わず目がいく。両者が座っているのは奇しくも同じ椅子。デンマークの家具デザイナー、ハンス・ウェグナーの代表作《ザ・チェア》(1949)、「椅子の中の椅子」と称賛された椅子である。ウェグナーの功績を伝えるうえで、これほど強いコンテンツはないだろう。しかし彼がデザインした家具はこれだけではない。日本の家庭で愛されている《Yチェア》(1950)もよく知られた名作のひとつであるが、これらをはじめ彼は生涯で500脚以上もの椅子をデザインし、世に送り出してきたという。その膨大な作品群を誰よりも熱心に研究してきたのが、世界的な椅子研究家・収集家の織田憲嗣だ。本展は、その織田コレクションのなかから希少作品を含め体系的に収集された約160点の椅子と、その他家具約20点が一堂に会する大変貴重な機会だった。本国を除くと、世界でも過去最大規模のウェグナーの回顧展が開かれたというわけである。

「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」展示風景 ヒカリエホール 2025~2026年
建築家の田根剛による会場構成も、本展の魅力をさらに発揮させる力となっていた。通常、椅子は床に置いて使用するが、上から下までじっくりと鑑賞するには床置きのままであると腰を屈めなければならない。そこで床より一段上げた台に全ての椅子を展示し、来場者が自然な目線で鑑賞できるように工夫を凝らしていたのである。また照明を落として空間全体を暗くする一方、台上の椅子にはスポットライトを当て、まるで舞台のような特別感も演出していた。そんななかで椅子を鑑賞していると、織田自身の静かな語りが空から降ってくる。それに耳を傾けながら鑑賞するのも、とても心地良く感じた。

「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」展示風景 ヒカリエホール 2025~2026年 織田憲嗣氏(左)と田根剛氏(右)

「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」展示風景 ヒカリエホール 2025~2026年
過去8回もウェグナーに会見したことのある織田は、その語りのなかで「ウェグナーの自宅には提灯や漆塗りの盆、こけしなど日本の工芸品がいくつも飾ってあった。きっと日本のものづくりに同じクラフツマンシップを感じていたのではないか」など、自身の体験によって得られた唯一無二の情報を提供してくれる。なんと、贅沢なこと極まりないではないか。ほかに開発当時の原寸図面や解体されたパーツなど、椅子の製作背景を伝える展示も見応えがあり、織田をはじめ日本人の特別なウェグナー愛があればこそ実現した展覧会であると、つくづく感じたのだった。

「織田コレクション ハンス・ウェグナー展 至高のクラフツマンシップ」展示風景 ヒカリエホール 2025~2026年
鑑賞日:2025/12/25(木)