会期:2024/02/15〜2024/03/03
会場:コミュニケーションギャラリーふげん社[東京都]
公式サイト:https://fugensha.jp/events/240125kanagawa_ryu/
雑誌『写真』(ふげん社)第5号刊行記念展として開催されている連続展は、後半のRyu Ikaの展示に入った。中国・内モンゴル自治区出身で、2021年に赤々舎から刊行した写真集『The Second Seeing』で、内外の写真関係者の注目を集めつつあるRyu Ikaは、今回、母親にテーマを絞ったシリーズを発表している。母親との関係は、新型コロナウィルス感染症の影響で、まったく会うことができなかった時期を挟んで大きく変わったという。作品からは、その互いに一体化した親密な関係が失われ、異質な他者としての側面があらわれつつある状況が浮かび上がってきているように見えた。
個展の会場構成が大胆かつ意欲的だった。布プリントを繋ぎ合わせて、タペストリーのように壁から吊るした、かなり大きな作品がメインで、キャンバス地にプリントしてドローイングを加えた作品、木枠をプリントで包んだ作品もある。羊、人、モンゴルのテント(パオ)などのフィギュアに、チョコレートのような塗料をぶちまけた、過激なインスタレーション作品もあり、Ryu Ikaの関心が、いわゆる“普通の写真”から大きく広がりはじめていることが見てとれる。
この方向性は悪くないと思う。もともと彼女のなかには、写真を平面の呪縛から解放して、オブジェ化したいという欲求があったはずで、それが今回の展示ではより強く打ち出されていた。仕上げの部分での処理の甘さが目立つのが少し残念だが、展示からも、エネルギーを全開にしてチャレンジしようという姿勢がストレートに伝わってきた。
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