会期:2024/02/02~2024/03/25
会場:無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery1東京都]
公式サイト:https://atelier.muji.com/jp/exhibition/6384/

45文字以内なのだそうだ。しかも3行と決まっているから、15文字×3行。何の話かというと、無印良品のパッケージやタグに書かれている商品コピーのことである。食品はもう少し長めというが、それ以外は基本的にこのルールで、商品開発の視点や工夫などを簡潔にギュッとまとめて消費者へ伝えてきた。これまでに雑誌の記事を書いてきた私の経験から言うと、1枚の写真に付けるキャプション程度の文字数である。1〜2文での構成となるが、驚いたのは、3行のレイアウトの中で読みやすく収めるために必ず文節で改行しているという点だ。これは頭を悩ませる場面が多かったに違いない。

本展はそんな無印良品の商品コピーに長年携わってきた、コピーライターの徳永美由紀の仕事にスポットを当てた展覧会である。まず会場構成が秀逸だった。あの生成りの再生紙にベンガラ色で書かれたタグが、そのまま拡大された形でひと続きのロール紙となっていて、それが展示パネルや空間をたおやかに仕切るパーテーションとなっていたのである。自分が小人になって、無印良品の商品群の中へ飛び込んだかのような錯覚を抱かせた。

展示風景 無印良品 銀座 6F ATELIER MUJI GINZA Gallery1 ©ATELIER MUJI

現在、無印良品の商品は衣料品や生活雑貨、家具、食品などと実に幅広く、アイテム数も膨大だ。商品企画から開発、製造、流通、販売までを一社が一貫して行なっているとはいえ、スタッフ全員が全商品の特徴や生産背景をしっかりと把握しているわけではないだろう。そんな状況下で頼りとなるのが商品コピーだ。つまり商品コピーは、顧客はもちろんのこと、ビジネス用語でいえばステークホルダー同士の重要なコミュニケーションツールとなっているに違いない。わずか何秒という時間で誰もが理解できる平易な言葉を用いて、その商品が「良品であるわけ」を言い表わしているからこそ、スタッフはこれだけのアイテム数を混乱なく取り扱うことができるのだ。これこそ優れたコミュニケーションデザインであると感じる。特に独自の世界観や思想の下で展開する無印良品は、一つひとつの商品に「良品であるわけ」が伴っていなければブランドとして成り立たない。45文字に集約されたコピーは、そんなブランドを支える骨格のひとつとも言えるのだろう。

鑑賞日:2024/03/06(水)