編集:JAGDA展覧会委員会
発行:公益社団法人 日本グラフィックデザイン協会(JAGDA)
発売:誠文堂新光社
発行日:2024/02/22
公式サイト:https://www.seibundo-shinkosha.net/book/art/86168/

JAGDA(日本グラフィックデザイン協会)が発行したという点で、これはとても興味深い書籍だった。「ジカツ」とは自活のことで、「ジブンで仕事をつくる。ジモトで仕事をつくる。ジマンの仕事をつくる」ことを表わす。同書では、JAGDAの全国会員のなかでも地元で自主的な活動を行ない、地域に貢献し、地域活性化へとつなげているグラフィックデザイナー8人を紹介している。農業、暮らし、伝統食、芸術祭とその取り組みはさまざまで、東北から四国、中国地方までエリアもいろいろだ。例えば半農半デザインというべきか、実家の農業を継いで農作業とデザイン作業を一日の間に交互に行なっているデザイナーや、暮らしをテーマにしたローカルマガジンを発行しているデザイナー、マルシェの開催をきっかけに地元民の情報発信やプラットフォームづくりをしたデザイナー、地元民にあまり好まれていなかった伝統食に着目し、その価値を広げたデザイナーなど、いずれも土着的でありながらクリエイティブな取り組みばかりで、読みながらワクワクしてしまった。

同時に、彼らの活動は時代にとても合っていると感じる。よく比較として挙がるのが、ひと昔前のデザイナー像だ。それは大御所デザイナーが東京から地方にやってきて、自分の作品づくりのように仕事をし、高額のデザイン料をせしめていくのだが、結果的にあまり売れない商品だけが残ってしまうという不幸な話である。当然、そんなデザイナーは歓迎されないし、もうとっくにそんな時代は過ぎた。いまはむしろデザイナー自身が地元に足繁く通ったり住んだりし、地元民と同じ目線で伴走しながら、その地域特有の問題解決や価値創造を行なうことが求められている。そうした方法でこそ、未来が開けるとわかってきたからだ。当然ながらデザイナーはデザインの領域をグッと広げ、より俯瞰した視野を持つ必要がある。

本書で取り上げられている事例からもうひとつ気づくのは、地域のインナーブランディングにどの事例も成功している点である。それには地元民を巻き込むための施策が必要で、彼らは自分事として捉えることができて初めてシビックプライドを持てる。逆に言えば、インナーブランディングができれば地域のためのデザインはたいていうまくいく。そうした道筋を本書のいくつもの事例から教わった。

鑑賞日:2024/03/04(月)