会期:第1部「価値と魅力」2026/08/29~2026/11/23、第2部「継承と活用」2026/12/03~2027/02/23
会場:国立近現代建築資料館[東京都]
公式サイト:https://www.bunka.go.jp/nama/exhibitions/2607.html

ユネスコの世界文化遺産に登録されている建築のほとんどが、寺院や教会などの宗教建築、城郭や宮殿、要塞、また歴史的都市や町並みだ。つまり古代から近世までの歴史的建造物や遺跡が圧倒的多数を占めており、20世紀以降の近現代建築はほんのわずかしかないのが実情である。その不均衡についてユネスコは問題視し、是正を図るべく、いま、近現代建築の新規登録が急速に進んでいるという。そんななかで脚光を浴びているのが、DOCOMOMO(ドコモモ)の活動だ。DOCOMOMOとは、Documentation and Conservation of buildings, sites and neighborhoods of the Modern Movement(モダン・ムーブメントに関わる建物と環境形成の記録調査および保存のための国際組織)のこと。1988年にオランダで設立されて以来、世界に79支部まで広がり、そのうちの一つとして2000年にはDOCOMOMO Japanも設立された。日本では日本建築学会とともに「日本におけるモダン・ムーブメントの建築」を選定し、それらの歴史的・文化的価値を記録した上で、保存・再活用の提案などを行なっている。

展示風景 文化庁国立近現代建築資料館[写真提供:文化庁国立近現代建築資料館]

本展は、そのDOCOMOMO Japanによる日本の近現代建築選定が300件を超えたことを記念したものだ。2期にわたって、300件のうち約100作品が一堂に紹介される。前川國男、坂倉準三、菊竹清訓、村野藤吾、吉阪隆正+U研究室、原広司+アトリエ・ファイ建築研究所と、錚々たる建築家らによる作品が写真や映像、一部模型などで紹介され、昭和を中心とした名建築を一挙に眺める機会に恵まれる。実際に一望すると、いずれも骨太でありながら端正な建築がそろっていることを痛感する。現在も存在している建築もあれば、なかには残念ながら取り壊されたものもあった。

展示風景 文化庁国立近現代建築資料館[写真提供:文化庁国立近現代建築資料館]

実は築数年〜数十年の近現代建築は、一般の目にはその文化的価値がなかなか伝わりにくいという問題がある。いわゆる歴史的建造物や遺跡であれば、一目でわかりやすく、観光名所化しやすいのだが、現在も街中で当たり前のように機能しているビルに対して、人々は特別な目で見ることがないからだ。むしろ「ただの古めかしいビル」に映ってしまう場合もあるだろう。そうしたもどかしさを抱えているため、専門家の審美眼によって300件を超える建築がリスト化されたことは、今後、日本の近現代建築の文化的価値が世に浸透する良いきっかけとなり得る。日本の近代化や高度経済成長期を支えた名建築をこの機会にしかと観ておきたい。

展示風景 文化庁国立近現代建築資料館[写真提供:文化庁国立近現代建築資料館]

鑑賞日:2026/09/29(火)