[秋田県]

日建設計による《秋田市文化創造館》、すなわち1967年にオープンした《(旧)秋田県立美術館》のDOCOMOMO Japan 選定記念プレート贈呈式に出席したあと、館長の藤浩志による進行のもと、トークセッション「いきる建築」に登壇した。この建築は、安藤忠雄が設計した県立美術館が2013年に誕生することに伴い、一時は取り壊しになると思われたが、市に譲渡され、《秋田市文化創造館》として再生することになった。その際、名称の議論があり、ミュージシャンのプリンスの改名のように、「旧県立美術館」という案もあったという。藤田嗣治の巨大な絵画《秋田の行事》を展示した大空間は、現代アートの展示やイベントに使われ、1階はさまざまなアクティビティを受け入れる。なお、外観の反った屋根や連続する円窓は印象的な形であり、筆者にとってはこれらを見ると、秋田市に訪れたという気分になったように、アイコン的な存在だった。

実際、現在の県立美術館も、向かいに完成した佐藤総合による《あきた芸術劇場ミルハス》(2022)も、2階の窓から《秋田市文化創造館》の屋根を見せることを意識している。ミルハスは、ホールでありながら、現代的な開放性をもち、好感を抱いた。フリーオープンデイに訪れ、地元のアウトクロップ・スタジオが制作したドキュメンタリー映像『おかえり有楽町』を鑑賞した。かつて秋田市の有楽町エリアに存在した複数の映画館の記憶を辿りつつ、八戸、盛岡、宮古の状況にも触れ、現代の有楽町と言える新しい場所をつくることを投げかける。

《あきた芸術劇場ミルハス》の2階から《秋田市文化創造館》を見る

《秋田県立美術館》から《秋田市文化創造館》と《あきた芸術劇場ミルハス》を見る

授賞式の会場となった《秋田市文化創造館》の吹き抜け

今回は、ほかにいくつかの建築を訪れた。運動公園の《秋田県立体育館》(1968)もダイナミックな屋根と造形をもち、現役として活躍するモダニズム建築であり、今後のDOCOMOMOの候補になるだろう。《秋田県営住宅新屋団地》(1984-)は、低層部の黄色など効果的な色使いや、門状の空隙が連なるシンボリックな配置によって、なるほど、原広司らしい建築作品が実現された。ここでの団地群の巨大なスケールのコントロールを経験し、ヤマトインターナショナルや京都駅などのメガ・プロジェクトに成功したのではないか。秋田公立美術大学のキャンパスは、保存された昭和初期の大きな旧農業倉庫が8棟並ぶ風景が壮観である。これらは研究室、工房、ホール、ギャラリー、地域交流などに活用されていた。さらに隣の低層の《秋田市立新屋図書館》(1998)も、倉庫の一部を共有している。大学も図書館も、現代建築は松田平田設計が担当したものだ。

《秋田県立体育館》

原広司《秋田県営住宅新屋団地》

松田平田設計《秋田公立美術大学》

松田平田設計《秋田市立新屋図書館》

《秋田市文化創造館》の活用状況

鑑賞日:2024/02/24(土)、25(日)