「切り刻むこと」。シミュレーショニズムの代表的な技法のひとつで、単一の作品の中に複数の要素を混在させ、イメージの異化効果を産もうとする。シュルレアリスムやポップ・アートにおけるコラージュに相当する技法だが、カット・アップの場合は、シミュレーショニズムの背景でもある高度資本主義のスピード感を反映して、その表現にはより多くの偶然性が介入し、多くの場合その効果は当の作者をも裏切る効果をもつ。もともとはB・ガイスンが開発した文学上の技法だが、W・バロウズの文学と美術とをまたがる活動によって、カット・アップが造形表現にももたらされることになった。この技法が高度資本主義と深く共鳴するする効果をもっていたことは、G・ドゥルーズ+F・ガタリ『千のプラトー』(宇野邦一ほか訳、河出書房新社、1994)の序章「リゾーム」を読めば一目瞭然である。
(暮沢剛巳)
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