資本主義の暗部をリアリズムとして照らし出す概念。そもそもはサイバーパンク小説の解釈用語として設定された「ダーティ・リアリズム」だが、それをポストモダン建築・都市空間へと適用してみせたのはL・ルフェーブルだった。資本主義の暗部とは、経済的な必要悪によって汚された都市のダーティな部分のことであり、それらの諸部分は通例「ゲットー」「スラム」「ルンペン」などの蔑称で呼ばれていた。ルフェーブルの眼目は、そうした都市の暗部を、とりわけ後期資本主義以降の理論的展開の中に位置付けていくことにあり、その試みは当然のようにD・ハーヴェイやF・ジェイムソンらのポストモダニズム論と深く共鳴している。あるいは、ルフェーブルが「批判的地域主義」の提唱者であったことを思えば、「ダーティ・リアリズム」がモダン・アーバニズムにもディコンストラクションにも与さない都市論としての側面を持つことが了解されるだろう。そして、この「ダーティ・リアリズム」を最も端的に投影している作品とされるのが、R・スコットの映画『ブレードランナー』である。
(暮沢剛巳)
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