美術作品が“特定の場所に帰属する”性質を示す用語。といって、美術作品にとって“特権的な場所”であるはずの美術館の機能を補完するのではなく、逆に批判するために用いられることが多い。展示空間全体をひとつの作品に見立てる「インスタレーション」や、「ミニマリズム」の純粋形式に対する反発として登場した「プロセス・アート」、公共空間における美術作品の意味を問う「パブリック・アート」といった新しい表現形態の本質とは不可分の関係にあり、1950年代末から60年代初頭にかけて台頭したこれらの形態は、作品の「場所」や「構造」といった問題を問いかけることになった。なお、場所の唯一性を意味するということで言えば、歴史的経緯は異なるものの、現象学的な問題を共有する建築用語、「ゲニウス・ロキ」との類似性を指摘することができる。
(暮沢剛巳)
|