ミニマル・アートの「客体然とした状態」のこと。マイケル・フリードの有名なミニマル・アート批判「Art
and Objecthood(芸術と客体性)」(1967)において強調された概念。フリードは彼の擁護するモダニズム芸術に対して、ミニマル・アートは「演劇的」(theatrical)であり、観客への効果に依存していて、自律していないと批判する一方、モダニズムの芸術は意味が充満していて自律している。すなわち、ミニマル・アートの作品は置かれる状況に左右されるが、モダニズム芸術の作品は左右されないのだ。それは、ミニマル・アートの作品が「物体」(object)であり、「客体」(object)であり、意味が欠落しているからだ。フリードが擁護するモダニズムの芸術の代表的な作家はアンソニー・カロであり、カロの作品のどの部分を見ても、どの瞬間にも全体が開示されていることを評価した。
主体としての観者(beholder)を従える客体という観点から、通常「客体性」と訳されるが、「物体=客体性」とも訳しうる意味合いを持っている。ミニマル・アートを論じるに際しては、今なお言及されることが多い。。
(三上真理子)
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