作品の制作において素材を加工する過程を芸術家が第三者に発注する芸術。作家の制作技術を芸術作品成立の契機としないことから、作品では内容が重視される傾向にあり、その意味でコンセプチュアル・アートのひとつとして捉えることができる。また、あくまでも芸術家によって規定される作品が第三者のつくる過程の痕跡をとどめることは好まれないことから、外見はミニマル・アートに接近することとなる。発注芸術は、そうした「発注」の行為の現前化を志向する結果、「発注」の事実そのものが作品内容となる傾向にあり、この点で作家のオリジナリティを表現することは困難である。また、第三者の痕跡がわずかでも残ってしまう以上、作品の自律性を作家が固持することもまた困難である。しかし、これらの困難はモダニズム特有のオリジナリティ重視の姿勢から導き出されることであり、またその困難は意図的に選択されていることから、発注芸術をモダニズム批判として捉えることもできよう。これらの特徴は、S・ルウィットの作品に顕著である。また、作家でない外部を導入するという点では、コラボレーションの一部にも認めることができよう。
(保坂健二朗)
関連URL
●S・ルウィット http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/s-lewitt.html
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