いわゆるミニマル・アートを含む、1960年代の彫刻の傾向に対して与えられた名前のひとつ。強いて訳せば「基本構造」。66年、ジューイッシュ[=ユダヤ]美術館(ニューヨーク)でキーナストン・マクシャインの企画によって開催された展覧会、「プライマリー・ストラクチャーズ
」展に由来する。これは、イギリスとアメリカから選ばれた当時の新鋭彫刻家42人の作品を紹介する展覧会で、結果的にそのころまだ歩みはじめたばかりだったミニマル・アートが、現代美術のひとつのメイン・ストリームに躍り出るきっかけとなった。ただ、この「プライマリー・ストラクチャー」イコール「ミニマル・アート」ではない。マクシャインの言う「プライマリー・ストラクチャー」とは、当時ほかのジャンルに圧されて閉塞した状況にあった彫刻が、基本的=プライマリーな形態と、色彩、特に原色=プライマリー・カラーとの相乗効果に活路を見出したものだった。だからそこには、確かに「きれいな色つき」という目新しさはあるけれど、ミニマル・アートのアーティストが「依然としてコンポジションによっている」として敵視したような彫刻作品──例えば伝統的なコンポジションによるものとは言えないがアンソニー・カロの作品──も含まれている。
(林卓行)
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