この数年来、現代美術家の村上隆が積極的に提言している、平板で余白が多く、奥行きに欠け遠近法的な知覚を拒むなど、伝統的な日本画とアニメーションのセル画とに共通して見られる造形上の特徴を抽出した概念。現代美術の文脈に、日本特有のオタク文化の美意識を導入するために用いられることが大半だが、かつてL・スタインバーグが提唱した「フラットベッド」との親近性を指摘する声もある。村上の一貫した感覚と強い戦略性は、美少女フィギュアなどの立体的な造形作品をもスーパーフラットと称していることからも窺われるし、また最近では、哲学者の東浩紀がHTML言語のデータベースをこの概念で説明したり、現代建築のある種の傾向がスーパーフラットの比喩で語られたりするなど、現代美術の枠を超え、広く現代の文化全般に関わる概念として参照されることも多くなった。本来全く異質なはずの美術とオタクを安直に組み合わせた俗流理論との批判も少なくないが、村上が日本を代表するアーティストとしての地位を不動のものとしたのに並行して、スーパーフラットの影響力もさらに拡大しつつあり、今後も活発な議論が期待される。
(暮沢剛巳)
関連URL
●村上隆 http://www.dnp.co.jp/museum/nmp/nmp_j/people/t-murakami.html
●東浩紀 http://www.hirokiazuma.com
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