6時起きして箱根へ。すでに1回目のお茶席がはじまっていた。「岡倉天心との対話」をテーマに蔡國強が既存の茶室そのものを彼の作品につくりあげた。庭に面した側の障子を取り払い、茶室の床の間に近い壁に庭から勅使河原宏監督の映画『利休』(1989)を投影。天気や太陽の位置によって壁に映し出される画像は濃く見えたり、亡霊のようにうっすら見えたりする。庭木に当てられた照明は片方からはマゼンダ、もう一方からは赤と緑。こちらも自然光のうつろいによって混じり合って色が変化する。武者小路千家の若宗匠千方可氏が亭主をつとめてお茶席が進められた。千氏がこの日のために選んだ取り合わせの妙がけっして目立つことはないが素晴らしかった。書院に開いて置かれた岡倉天心著作『The
Book of Tea』も、憎い演出だった。利休の子孫である千さんとお茶との見えない関係や、時代を越えて今も脈々と流れる時間や空間。そしてこうした現代を生きる若い千さんとの出会い……などさまざまな事柄が蔡さんにエネルギーを与えていたようだ。 [4月14日(日) 原久子]