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プラド美術館[マドリッド] |
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たっぷり1時間以上かけて「フェルメール展」を見たあとも、ごっそり名画が待っている。考えてみると、プラドに来るのは18年ぶり。去年「プラド美術館展」を見て少しフラストレーションがたまっていたので、「フェルメール展」にかこつけてここに来たともいえる。ともあれまずはベラスケス。《ラス・メニーナス》《アラクネ》など晩年の大作もすばらしいが、2点の風景画や《巫女》といった小品も限りなくいとおしい。ベラスケスは忍び足でやってくる静かな天才ですね。その点、ルーベンスは天才をとおり越したにぎやかな超人だが、恵まれすぎて代表作がない。ここではやっぱり《愛の園》か。ティツィアーノは何点か重要作がロンドンに行ってるけど、それでもヴィーナス2点と《ダナエ》だけで十分。ボッスの《快楽の園》、デューラーの自画像、フラ・アンジェリコ、ティントレット……あげればキリがない。日本ではあまり紹介されてないけど、フランドルの画家ロベール・カンパンとヨアヒム・パティニールがやけに新鮮に映る。結局6時間ほど滞在。
[4月8日(火) 村田真]
今朝もこりずに8時40分ごろプラドへ。やっぱりだれも並んでない。また一番乗りで「フェルメール展」に入り、再び5分ほど《絵画芸術の寓意》を独占。フェルメールの作品が9点あるということは全作品の4分の1がここに集まってるわけだ。このうち日本に来たことがあるのは、ドレスデンの《窓辺で手紙を読む女》(1968)、ワシントンの《天秤を持つ女》(2000)、アムステルダムの《恋文》(2000)の3点。今回ぼくが初めて見たのはブランシュヴィックの《ふたりの紳士と女》だけ。あと見てないのは3点か。いかん、どうもフェルメール好きは何点見たかを自慢しがちだ。それにしても、フェルメールを1点ももってないプラドがこれだけの展覧会を開けるのも、やはりコレクションの力でしょうね。「前にベラスケスを貸したから、今回フェルメールを貸してくれ」とか。常設展では、昨日パスした3階のゴヤを見て、もういちど館内をひとまわり。
[4月9日(水) 村田真] |
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ティッセン・ボルネミッサ美術館[マドリッド] |
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ここはドイツ人ティッセン・ボルネミッサ男爵のコレクションをスペイン政府が買いあげて、10年ほど前に開館したばかりの新しい美術館。プラドに欠けてるフィレンツェ派やフランスのロココ、それに近代以降の絵画およそ800点がそろってる。カラヴァッジョの《アレクサンドリアの聖女カタリナ》をはじめ佳作も少なくないが、プラドに比べれば小品が多く、落穂拾いの観は否めない。それでも日本にある泰西名画すべてを集めても、ここ1館にはかなわないだろう。地下の展示室では「カンディンスキーと音楽」みたいな企画展をやっていて、シェーンベルクのドローイングが不気味だった。
[4月8日(火) 村田真] |
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サン・フェルナンド王立美術アカデミー[マドリッド] |
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飛行機は夕方なので、午後は教会をまわろうと思ったらなんとシエスタで閉まってる! しかたなくホテルの向かいの王立美術アカデミーへ。ゴヤ、ベラスケス、ムリーリョなどスペイン絵画が中心だが、はっきりいって見るべきものはない。まあこの日はたまたま無料だったからいいけど。夜ロンドンへ。イラク戦争ではイギリスとスペインがアメリカに追従したけど、この時期その2カ国を旅行するというのもなんだかな。
[4月9日(水) 村田真] |
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ティツィアーノ展 |
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2/19〜5/18 ナショナルギャラリー[ロンドン] |
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今回の旅の第2の目的がこの「ティツィアーノ展」。イギリスでは「ティシャン」と呼ばれ、日本では30年ほど前まで「チチアン」と表記していた。チチアンねえ。こちらも混んでいて、チケットは時間指定の予約制、当日券は朝早くに並べばゲットできると聞いていたので、10時開館の30分前に行く。が、やはりだれもいない。近くをぶらぶらして9時50分ごろ行ったら、こんどは20人ほど集まっていた。しかもスペインみたいにたむろするのでなく、整然と並んでいるのだ。さすが行列好きのイギリス人。 出品は50点で大きな展覧会ではないが、作品の大半は画集や美術館で見たことのある粒よりのものばかり。しかも今回は、フェラーラ公アルフォンソ・デステの依頼で私室を飾るために制作された4点の神話画が、350年ぶりに一堂に会することで話題になった。そのうちの《バッカスとアリアドネ》はナショナルギャラリー所蔵だが、2点はプラド、1点はワシントンのナショナルギャラリーのもの。こんな芸当ができるのも、ロンドンのナショナルギャラリーがプラドにフェルメールを1点貸しているから。一方、ワシントン・ナショナルギャラリーはプラドにも2点のフェルメールを貸し出すという大盤振る舞いだ。うがった見方をすれば、これはイラク戦争への協力の見返りではないか? そんな生ぐさい現実とは裏腹に、作品はまことに馥郁たる香りを漂わせ(古くさい美術評論調だ)、フェルメールとは違った絵を見ることの悦楽を与えてくれる。
[4月10日(木) 村田真] |
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ロン・ミュエック展 |
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3/19〜6/22 ナショナル・ギャラリー[ロンドン] |
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本物そっくり、でもサイズが違うという彫刻で知られるロン・ミュエックの小企画展が開かれていた。出品は、布に包まれた乳児、臨月の巨大な妊婦、新生児をおなかのうえにのせた母、それを遠く小舟のうえからながめる父の4点。19世紀までの絵画しかあつかわないナショナルギャラリーが、「センセーション」の彫刻家をとりあげるのもあざとい気がするが、彼は同ギャラリーのアソシエイト・アーティストとして、ここのコレクションの聖母子像にインスピレーションを得て制作したのだ。あわせて制作過程をたどるビデオも上映。その後は常設展を楽しむ。中世末期からルネサンス、マニエリスム、バロックと時代を追って見ていき、結局午後4時までメシも食わずに6時間もいたのに18―19世紀は見られずじまい。
[4月10日(木) 村田真] |
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E.A.T.――芸術と技術の実験 |
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4/11〜6/29 ICC[東京] |
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テクノロジー・アートなんて言い方は周囲では今はもうほとんど使われないが、この展覧会を観ていると「メディア・アート」なんて言葉はむしろそぐわない。教科書から飛び出したような、1960年代後半や70年代からの歴史を振り返るパネル展示や、作品展示を観てゆくと、とても新鮮に思えた。
[4月10日(木) 原久子]
「食」をテーマにした展覧会、ではない。1960年代にアートとテクノロジーを融合させ、美術、ダンス、電子音楽、映像など幅広く実験的表現を試みたグループE.A.T.(Experiments
in Art and Technology)の回顧展なのだ。代表的な活動に「9つの夕べ――演劇とエンジニアリング」、大阪万博のペプシ館などがあり、その後のパフォーマンスやメディア・アート、コラボレーションの先駆となっただけでなく、たぶん企業の広報イヴェントにも大きな影響を与えたんじゃないかな。展示はほとんどが写真と言葉による紹介で、少しストレスがたまる。
[4月23日(水) 村田真] |
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ドレスデン名作展 |
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3/15〜6/8 王立美術アカデミー[ロンドン] |
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前日、ナショナルギャラリーのあと「ドレスデン名作展」を見ようとここに寄ってみたら、小雨のなか100人くらい人が並んでいたのであきらめた。彼らのほとんどは終了間際のもうひとつの展覧会「アステカ展」がお目当てなのだが、チケット売場がひとつしかないのだ。この日も「アステカ展」は最終日とあって混み、こちらの会場は閑散としていている。ドレスデン絵画館は昨年エルベ川の洪水で被害に会い、現在修復中のためコレクションを貸し出しているのだ。とはいえ、2点あるフェルメールの1点はプラドだし、ラファエロの《サンシストの聖母》もジョルジョーネ(+ティツィアーノ)の《眠れるヴィーナス》も来ていない。それでもマンテーニャ、デューラー、ベラスケス、それにドレスデンを描いた数点のカナレットが見られた。
[4月11日(金) 村田真] |
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大英博物館[ロンドン] |
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ロンドンに来たらやっぱり大英博物館にも行かなくちゃね。企画展として、近世日本の装飾美術を集めた「KAZARI」をやってたがパスして、隣の小企画展示室の「ハンス・スローン・コレクション」を見る。大英の基礎をつくったハンス・スローン卿のオリジナル・コレクションが出品されているのだ。彼はニュートンのあとを継いで王立アカデミーの会長を務めた医者だったので、コレクションの大半は書籍や動植物の標本といった自然科学関係の資料だったが、わずかながら美術関係の素描や版画も残している。その後2世紀半のあいだに書籍は大英図書館に、動植物の標本は自然史博物館に分散され、今回は博物学の版画と素描を紹介。20―30点ほどの小規模な展示だが、世界初の公共ミュージアムの原点に触れた気分。
[4月11日(金) 村田真] |
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