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アンダーグラウンド映画

Underground Film
更新日
2024年03月11日

60年代から70年代にかけて使用された、アメリカの実験映画を指す別称である。当時のアメリカ実験映画は産業化した商業映画に対するカウンターとして反商業主義と反検閲の立場を取っており、(現在に至るまで)自主配給ルートによって上映活動を行なっているが、この用語が使用される場合には、ドラッグやセクシュアル・マイノリティに関わるような、モラルを挑発するセンセーショナルなタブーに踏み込むことを厭わないアンダーグラウンドの映画であることが強調されているといえる。日本国内においては、用語自体は60年代後半に受容されたが、それは「アングラ」との略称によって世俗的なニュアンスを加えられ、映画にとどまらないサブカルチャー全般を指す用語としてジャーナリズムにおいて広まった。それはフーテンと呼ばれた当時の若者の価値観や、「ゼロ次元」などのグループによって街頭で行なわれた一連の反芸術的パフォーマンス/ハプニングやアングラ演劇とも結びつけられた。アンダーグラウンド映画を上映する場所としてはアンダーグラウンド蠍座などが存在し、フィルムの配給はジャパン・フィルムメーカーズ・コーポラティヴなどが担っていた。また、佐藤重臣が編集長を務めていた期間の『映画評論』は、誌面でアンダーグランド映画を大きく取り上げることで、この動向を後押しした。そのような動向のなかで過激化した作家やグループは、万博破壊共闘派に参加したり、60年代後半の安保闘争に合流してゆく。このような動向は、オルタナティヴな対抗文化としての意義をもっていたが、その一方で結果的にアンダーグラウンド映画そのものが風俗的なブームとして消費されてしまうという側面も存在した。「アングラ」ブームの終焉以降は、この用語は使用されなくなり、実験映画もしくは個人映画という用語が使用されるようになった。

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参考文献

『アンダーグラウンド映画』,シェルドン・レナン(波多野哲朗訳),三一書房,1969
『地下のアメリカ』,金坂健二,学芸書林,1967
『映画・日常の実験』,かわなかのぶひろ,フィルムアート社,1975
『祭りよ、甦れ! 映画フリークス重臣の60s-80s』,佐藤重臣,ワイズ出版,1997
『アンダーグラウンド・フィルム・アーカイブス』,平沢剛編,河出書房新社,2001