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アート・プロジェクト

Art Project
更新日
2024年03月11日

作品そのものより制作のプロセスを重視したり、美術館やギャラリーから外に出て社会的な文脈でアートを捉えたり、アートを媒介に地域を活性化させようとする取り組みなどを指す。クリスト&ジャンヌ=クロードによる、建物や橋、島を巨大な布で梱包する取り組みが有名。欧米から高い評価を得るベネッセアートサイト直島をはじめ、日本でも数多くのアート・プロジェクトが展開されているが、目的や活動内容は多様で、明確な定義があるわけではない。日本で「アート・プロジェクト」という言葉が使われ始めたのは1980年代前半で、川俣正や柳幸典がその先駆けだが、既存の展示スペース以外の場所で展示しようとする試みは、50年代から野外美術展というかたちで行なわれていた。60年代にかけて作家が自分たちで場所を探して展覧会を行なう動きが活発になり、この流れは70-80年代に続いていくが、それは美術館やギャラリーの枠に縛られない自由な制作がしたいという作家の興味や関心によるものだった。90年代に入り、ワークショップやアーティスト・イン・レジデンスなど、制作過程を来場者に見せたり、地域住民を巻き込んで制作する方法が確立すると、教育普及活動に力を入れ始めた美術館の動向とも相まって、市民参加型の企画が重視されるようになった。近年では、作家が地域住民と協働することで地域振興を目指すようなプロジェクトも少なくない。

補足情報

参考文献

『観光アート』,山口裕美,光文社新書,2010
『直島 瀬戸内アートの楽園』,秋元雄史、安藤忠雄ほか,新潮社,2006
『社会とアートのえんむすび1996-2000 つなぎ手たちの実践』,ドキュメント2000プロジェクト実行委員会,2001