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イタリアン・デザイン

Italian Design
更新日
2024年03月11日

イタリアの近代デザイン史は、「第1回トリノ近代応用芸術博覧会」(1902)で、アール・ヌーヴォーやユーゲントシュティールなどに代表される同時代のヨーロッパを席巻した新芸術の諸動向が紹介されたこと、美術・文芸を中心にした未来派の台頭(1909年、「未来派創立宣言」がパリで発表された)、並びに、プロダクト・デザインの発展と、企業の社会貢献に寄与したタイプライター・メーカー「オリヴェッティ」の設立(1908)を、その源流の大きな柱としている。また、建築・工芸については、古典様式の確立、クオリティの高い素材・手仕事性に対するこだわり、科学技術と芸術の融合なども、背景として見逃せない。これらをふまえて、20世紀前半には、機械・運動の美学、ダダやシュルレアリスムとも連動した未来派の特異なアヴァンギャルド・デザインを始め、機能主義(建築)、インダストリアル領域の展開(自動車など)で傑出したデザインを生み出していった。第二次世界大戦後は、今日まで続く「ミラノ・サローネ」(国際家具見本市ほか。1961年にスタート)を大きな刺激としながら、イタリアらしい「生活の豊かさ・楽しさ」を代弁する家具、インテリア、ライティングで知られる。60年代末になると、モダニズムの否定、デザインの再定義を試行錯誤するアンチ・デザインの拠点国となり、この流れを受けて、70~80年代は、ポストモダンのスタイルが席巻した。このような歴史を通じて、イタリアン・デザインを括る特質としては、前衛性、国際性、華やかさ、職人芸、何らかのかたちで「古典」に言及する姿勢などが挙げられる。

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