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インストラクション・アート

Instruction Art
更新日
2024年03月11日

鑑賞者への「指示(instruction)」をその中核とするタイプの芸術作品の総称。何を「インストラクション」として定めるかというその範囲にもよるが、言葉によるインストラクションをもっとも積極的に用いたのはフルクサス周辺のアーティストたちである。その代表例としてはオノ・ヨーコの《インストラクション・ペインティング》(1962)や《グレープフルーツ》(1964)、ジョージ・ブレクトの《ウォーター・ヤム》(1963)などが挙げられる。フルクサス以降も、フェリックス・ゴンザレス=トレスをはじめインストラクションを積極的に用いた作家は少なくない。特筆すべきは、キュレーターのハンス・ウルリッヒ・オブリストが90年代から継続している「do it」というプロジェクトである。これは、さまざまなアーティストに作品の「設計図」のみを提示してもらい、それを世界各地の人々に制作させるというものだが、ここでは作品の設計図(「この作品を制作せよ」というインストラクション)のみが与えられているため、当の人々はインストラクション・アートのそれと本質的に同じ状況に置かれる。さらに日本においてこの系譜上に置かれるべき作品としては、作品の購入者にその設計図を提供する冨井大裕の彫刻作品などを挙げることができるだろう。他方、インストラクションの定義を「言葉による指示書」の外にまで拡張するならば、作品のタイトル(例えばM・デュシャンの《……が与えられたとせよ》)や矢印などの記号による指示を含め、この項目に含まれるべき作品は格段に増加するように思われる。

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補足情報

参考文献

do it,Hans Ulrich Obrist (ed.),e-flux and Revolver,2004