『ガゼット・デュ・ボン・トン』
- La Gazette du bon ton(仏)
- 更新日
- 2024年03月11日
リュシアン・ヴォージェルの編集のもと1912年に創刊されたフランスの高級モード雑誌。第一次大戦により15年に休刊となるが、20年に復刊し、25年まで続いた後、『ヴォーグ』誌に吸収された。誌面は、テキストと挿絵を大胆に組み合わせたデザイン性の高いレイアウトで構成されていた。また毎号、付録としてファッション・プレートと呼ばれる版画が10枚ほど収められ、ポール・ポワレやジャンヌ・ランバン、マドレーヌ・ヴィオネ、ジャック・ドゥーセなど、オートクチュールを代表するメゾンの最新の衣装が、ジョルジュ・バルビエやシャルル・マルタン、エドゥアルド・ベニート、ジョルジュ・ルパップなど、当時人気のイラストレーターたちの手によって精彩豊かに描き出された。上質な手漉き紙に型を使って手作業で色を重ねていくポショワールの技法でイラストに彩色が施されたこの雑誌は、「上品で美しい雑誌」を意味するタイトルにふさわしい芸術性の高い作りを誇った。しかし、贅沢なポショワール刷りのモード雑誌は、次第に時代に馴染まなくなり、29年の世界恐慌の陰でいつしか姿を消していくこととなった。以後、モード雑誌の中心は写真に移るが、『ガゼット・デュ・ボン・トン』は写真製版の時代が本格的に幕を開ける直前に、ファッション・イラストレーションという分野に輝かしい一時代をもたらし、今日なお「20世紀最大のモード雑誌」と称されている。
補足情報
参考文献
『ファッション・プレートへのいざない』,伊藤紀之,フジアート出版,1991
La mode parisienne: la Gazette du bon ton 1912-1925,Alain Weil,Bibliothèque de l’image,2000