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贋作

Forgery
更新日
2024年03月11日

実際はほかの者が手掛けたにもかかわらず、作者の名を騙って流通する美術作品の模写、模作。原作者もしくは同一の工房によって制作される複製(レプリカ)、過去の巨匠に倣うことを目的とする模作(習作)と区別されるのは、贋作が他人を欺くという明確な意図でつくられることによる。ただし、悪意や詐欺的意図の立証は不可能に近く、真作/贋作を単に誤って認定してしまうケースもあるため、上記の定義のみで贋作と呼ぶのは難しい。真贋の決め手は作品の側ではなく、むしろ判定を行なう鑑定家や美術史家、鑑賞者の「目」のほうにかかっているとも考えられる。贋作制作の手法はさまざまで、対象となる作品をそっくりに模倣するものや、何点かの真作から得られる特徴を組み合わせ、実際には存在しないそれらしい様式を備えた作品をでっち上げるものなどがある。また、古い時代の絵画の贋作をつくる場合、絵具層の亀裂や古色を人為的にこしらえるという巧妙な手口がある。鑑定方法にはX線検査、化学分析などが挙げられるが、万全の策とはならない。一方で贋作は、時代ごとに形成される視覚、文化、趣味、流行といったものを少なからず反映するため、同時代人の目を欺いたものが後世の人間によってたやすく見破られてしまうケースも起こりうる。

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参考文献

『修復の理論』,チェーザレ・ブランディ(小佐野重利監訳、池上英洋、大竹秀実訳),三元社,2005
『真贋のはざま デュシャンから遺伝子まで』,西野嘉章編,東京大学総合研究博物館,2001
『芸術と芸術批評』,マックス・フリートレンダー(千足伸行訳),岩崎美術社,1968
『にせもの美術史 メトロポリタン美術館長と贋作者たちの頭脳戦』,トマス・ホーヴィング(雨沢泰訳),朝日文庫,2002
『美術手帖』第66巻第1010号,特集=贋作ってなに?,美術出版社,2014