Artwords®

ゲーテッド・コミュニティ

Gated Community
更新日
2024年03月11日

セキュリティの向上を目的として、出入口にゲートを備え、フェンスや壁で囲うことで、人や車の出入りをコントロールした住宅地。「要塞都市」とも呼ばれる。マイク・デイヴィスの『要塞都市LA』(原著:1990)やエドワード・J・ブレークリーとメーリー・ゲイル・スナイダーによる『ゲーテッド・コミュニティ 米国の要塞都市』(原著:1998)によって注目されるようになった。もともとアメリカでは、退役軍人や退職者をターゲットに、住宅地に付加価値を付けるためにゴルフ場などを併設し、周囲を囲みゲートを設けた住宅地などが存在していたが、90年代以降、過渡のセキュリティ不安からゲートを設ける住宅地がアメリカを中心に大量に現われた。その多くは、不動産会社ではなく住人たちの意思で独自にゲートを設置したものであり、また富裕層の住宅地だけでなく、インナー・シティや低所得者用の公営住宅でもゲートが設けられた。これらはコミュニティから部外者を締め出すという目的で作られたが、実際には居住者のコミュニティによる犯罪抑止機能が働かないと、非居住者を締め出したところで犯罪が少なくなるわけではないという批判も多い。アメリカ以外の地域では、ブラジルや東南アジア、アフリカを中心に富裕層を対象としたゲーテッド・コミュニティが無数に存在する。日本では、公道の占有が規制されるため、住宅地のゲーテッド・コミュニティ開発の例はほとんどないが、大規模マンションにおいて、ゲーテッド・コミュニティ化する例が見られる。

著者

補足情報

参考文献

『ゲーテッド・コミュニティ 米国の要塞都市』,エドワード・J・ブレークリー、メーリー・ゲイル・スナイダー(竹井隆人訳),集文社,2004
『集合住宅と日本人 新たな「共同性」を求めて』,竹井隆人,平凡社,2007
『要塞都市LA』,マイク・デイヴィス(村山敏勝、日比野啓訳),青土社,2001
『要塞都市LA』(増補新版),マイク・デイヴィス(村山敏勝、日比野啓訳),青土社,2008