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黒耀会

Kokuyou-kai
更新日
2024年03月11日

大正期のアナキストたちによる芸術・政治団体。1919年12月に、画家の望月桂を中心に、美術、文芸、音楽など多彩な領域の芸術家たちと労働運動家たちによって結成された。会の名前は、原始時代において人間生活に不可欠だった黒曜石にちなむ。社会の革命と芸術の革命は不可分と主張し、演劇の上演、展覧会活動、機関誌『黒耀』の発行、音楽会の企画などを行なった。黒耀会展は無審査であり、日本におけるアンデパンダン展の最も早い例のひとつである。望月による、大正天皇を未来派風の表現で諷刺した作品など、反体制的な作品が並び、何度も警察によって撤去が求められた。当時のアナキズム運動の中心人物であった大杉栄がこの展覧会に自画像を出品していたほか、石川三四郎、八太舟三、岩佐作太郎も参加していた。ほかにも、後にコミュニストの代表的な人物となる堺利彦、後に柳田国男の右腕となる橋浦泰雄、演歌師の添田唖蝉坊など、多士済々の文化人たちが参加していた。黒耀会展は2回で終わり、第3回は民衆美術展と名称を変えた。第4回展の詳細は不明。22年頃には解散したと思われる。プロレタリア美術運動の黎明期として知られる。

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参考文献

『日本プロレタリア美術史』,岡本唐貴,造形社,1972
『大正期新興美術資料集成』,五十殿利治他編,国書刊行会,2006
『前衛の遺伝子 アナキズムから戦後美術へ』,足立元,ブリュッケ,2012