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コンテクスチュアリズム

Contextualism
更新日
2024年03月11日

建築設計において敷地や周辺環境などの街区の形状や風景、歴史や文化などのコンテクストを重視する設計姿勢や設計思想のこと。1950年に建築家ロバート・ヴェンチューリが「建築の構成におけるコンテクスト」と題する修士論文を執筆し、ゲシュタルト心理学におけるコンテクストの概念を建築に導入した。コンテクスチュアリズムの語自体は、建築家・建築史家コーリン・ロウが開設したコーネル大学大学院アーバン・デザイン・スタジオの学生だったスチュアート・コーエンとスティーヴン・ハートにより65年頃考案された。71年にはロウの助手であったトム・シューマッハーにより「コンテクスチュアリズム 都市の理想形とその変形について」が発表され、周辺に対して自律的なモダニズム建築への批判としてコンテクストに応じた変形を加えるという彼らの方法を理論化した。その後もコーエンにより都市形態等の「物理的コンテクスト」に加えて意味作用を含む「文化的コンテクスト」が導入されるなど概念拡張が行なわれた。70年代後半、チャールズ・ジェンクスやロバート・スターンによりコンテクスチュアリズムはポストモダニズムのなかに位置づけられ世界中に普及したが、文化的コンテクストに偏重した概念として理解され、また歴史主義などとともに受容されたために、ポストモダニズム建築への批判が強まるにつれてコンテクスチュアリズムも退潮していった。しかしながら、21世紀になった現在の建築設計でもコンテクストの概念は多用されており、歴史保存やリノベーション、地域再生が重要なテーマとなっている現代においてその重要度は高まっている。

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参考文献

『現代建築のコンテクスチュアリズム入門』,秋元馨,彰国社,2002
『コラージュ・シティ』,コーリン・ロウ、フレッド・コッター(渡辺真理訳),鹿島出版会,1992
『言葉と建築 言語体系としてのモダニズム』,エイドリアン・フォーティー(坂牛卓、邉見浩久監訳),鹿島出版会,2006