再制作
- Reproduction
- 更新日
- 2024年03月11日
大規模で保管が困難だったり、期間を限定した展示であったために解体された作品、あるいは経年変化などにより原形を留めなくなった作品を、制作し直すこと。自作の彫刻を写真に撮り版画にするなど、複製ではなく同一モチーフの反復というかたちで再制作を続けたマン・レイのような作家もいるが、ほとんどは作家自身が積極的に行なうというより、アート・プロジェクトや回顧展に際し、主催者側から「あの時のあの作品を」という要請を受けて行なわれる。そのため、当時のまま忠実に再現することが求められる。再制作は、写真や映像などの記録ではわからないスケール感や迫力を伝えるには有効であるが、時代や環境の変化により、その作品が当時と同様の衝撃を鑑賞者に与えるとは限らない。また、作家自身の問題意識やモチベーションも違ってきているため、過去の作品を一切のアレンジを加えず再現するのは、自己模倣を強いられることになる場合もある。近年の事例では「赤瀬川原平の冒険 脳内リゾート開発大作戦」展(名古屋市美術館、1995)に出品された《ヴァギナのシーツ》(1964/94)や、高松市美術館が所蔵する田中敦子《電気服》(1956/86)が再制作に該当する。また「関根伸夫『位相-大地』再制作プロジェクト2011」では、神戸芸術工科大学が作家の協力のもと関根の代表作《位相-大地》(1968)を同校内に出現させた。
補足情報
参考文献
「マン・レイ 私は謎だ。」展カタログ,アートニングプランレイ,2004
「赤瀬川原平の冒険 脳内リゾート開発大作戦」展カタログ,「赤瀬川原平の冒険」実行委員会,1995
『まねぶ美術史』,森村泰昌,赤々舎,2010